2016年度には主に在日朝鮮人帰国運動と米国の役割に関して調べた。3年間を通じて、在日朝鮮人帰国運動を通じて、戦後日韓、日朝関係だけでなく、アメリカの東アジア政策の展開においても在日朝鮮人帰国運動は重要な転換時点であることが分かった。
2016年度の研究実績は次のようである。2016年9月9日~9月23日までアメリカカンザス州のアイゼンハワー大統領資料館とカナダトロント地域の脱北者調査を行った。アイゼンハワー大統領資料館(在任1953~1961年)は朝鮮戦争の終結と東アジアにおける米軍基地の再編、米韓同盟、日米安保条約など冷戦時期の東アジアにおけるアメリカの役割りを見ることができる貴重な資料元であった。特に56年から始まった在日朝鮮人の帰国運動が59年12月に実現するまでの期間において、アメリカがこの問題にどのような認識をしているのかを確認できる貴重な資料を発見することができた。CIAが創設される前に、アメリカは国務省、ホワイトハウス、国防省にそれぞれ個別の情報機関を設置しており、国務省が駐日米大使館に設置した情報機関から報告を受けた在日朝鮮人帰国運動の動向に関する資料は、これまで公開されていなかった資料でもあった。その他にも、米韓関係、日米関係の形成過程を確認する資料群など豊富な資料を見ることができた。
2016年8月9日から8月12日の間に、中国延辺地域の朝鮮族の帰国運動に関して資料調査を行った。新しく開館した延吉図書館は、50年代60年代の北朝鮮に関する貴重な文書が閲覧できるようになっており、中国朝鮮族の北朝鮮への帰国に関する社会背景を確認することができた。最近の中朝関係に関する新しい雑誌なども配置されており、中朝経済交流に関する最新統計も入手することができた。新華書店では、中国朝鮮族の抗日運動に関する著作集や歴史書などの新刊を購入した。
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