本研究は、1950年代半ばから進行した植民地独立が、それ以前から進行していた脱植民地化とは異なって、第三世界地域の人々の政治的権利を目指したものではなく、国家機構の介入による経済成長の達成が目標だったと議論した。しかしその目標は達成されず、旧宗主国とアメリカによる西側同盟を中心とする勢力圏に組み込まれたことも指摘した。さらに、米ソが第三世界情勢に介入したのは多くは旧宗主国による脱植民地化が安定的に進行しなかった事例であり、旧宗主国の失敗をみてソ連が影響力を伸長させるのを防ぐことがアメリカの目標であった。冷戦期を経て、旧植民地では西側資本主義に支配されたまま主権国家体系が移植されたのだと言える。
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