研究課題/領域番号 |
26380228
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
松本 はる香 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東アジア研究グループ, 研究員 (90450543)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 外交史 / 国際関係史 / 中国外交 / 両岸関係 / 中台関係 / 台湾 |
研究実績の概要 |
本研究では、1950年代の二度にわたる台湾海峡危機をめぐる米台関係の展開に焦点を当て、米国政府及び国府の対応について論じた。特に、台湾海峡危機における蒋介石の対応を分析の主軸に据えて、米国側の立場を踏まえつつ、主に台湾側の一次史料等を用いて、国府の立場について分析を行なった。その際、米ソ冷戦の対立構造のなかに組み込まれつつあるなかで、蒋介石自身が、冷戦や国共内戦をどのように位置づけていたのかについて検討した。それとともに、「大陸反攻」をめぐる米台間の立場の違いを明らかにした上で、蒋介石の「大陸反攻」の変遷についても分析を行なった。また、台湾海峡危機が「熱戦化」に至らなかった背景や、台湾海峡における対立の構造がいかなる変化を遂げたのか等についても分析を試みた。 本研究では、特に、台湾の国史館所蔵の「総統トウ案」や「副総統トウ案」、中央研究院近代史研究所トウ案館所蔵の「中華民国外交部トウ案」の外交交渉記録、国民党党史館における中央常務委員会記録や、スタンフォード大学フーバー研究所所蔵の「蒋介石日記」等を用いて分析を行なった。 従来の先行研究の主な焦点は、米国側や中国側の対応及び米中関係の展開が中心となってきた。その一方で、蒋介石をはじめとする国府の側が、実際に同危機をいかに捉えていたのかについては、従来、殆ど焦点が当てられることはなかった。或いは、台湾側に焦点が当てられたとしても、主には米国側の史料に依拠して論じられるか、若しくは米中関係史のなかで補足的に論じられることが多かった。だが、台湾側の一次史料等を読み込んでいくと、台湾海峡危機における米台間の矛盾や齟齬について、従来の米国側のみの分析視角からは見えなかった側面や、両者の新たな関係性などが浮かび上がってきた。本研究では、そのような米台関係史の歴史的空白を埋めるべく、蒋介石の側から台湾海峡危機を新たに捉え直すことを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究成果の一部を一連の査読を経て、学術誌『アジア経済』(2017年9月)に掲載された。また、本年度は、研究協力者である林果顕(国立政治大学台湾史研究所副教授)の日本における在外研究の機会を利用して、共同で外交資料館における史料収集などを行なった。さらに、関連の研究テーマでの学位論文「第一次・第二次台湾海峡危機をめぐる米台関係史」を完成させて博士号を取得した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの科研における一連の研究成果出版化に向けた準備のための改稿作業などを本格的に進める。また、必要に応じてさらに学術誌への投稿の準備などを進める予定である。今後も台湾をはじめとして、アジア太平洋の関連の地域における史料収集のためのアーカイブ調査を引き続き進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
産休・育休取得の取得のため、当初の研究計画の予定(現地調査を実施するタイミングなど)が多少前後している関係上、多少の繰り越しが生じている。今後も当初の予定に従って、スケジュールを再調整しながら、現地調査を行なうとともに、研究の遂行の関連の物品(書籍、ソフト・ハードウェアなど)についても、必要に応じて購入する予定である。特に、台湾の国史館では、アーカイブ史料に関する質の高い書籍の出版が多数進められていることから、それらのなかから厳選して資料購入に当てていきたい。
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備考 |
博士論文「第一次・第二次台湾海峡危機をめぐる米台関係史」東京女子大学大学院人間科学研究科人間文化科学専攻歴史文化領域、博士(人間文化科学)取得、2018年3月。
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