研究課題/領域番号 |
26380229
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏尚 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80415926)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際関係史 / 日本外交史 / 国際関係論 |
研究実績の概要 |
第三年度にあたる平成28年度は、以下の二点を中心に研究を進めた。 第一に国内における資料調査、及びインターネットを利用した資料調査である。国内資料調査については、GATT(貿易と関税に関する一般協定)を含む戦後日本の貿易政策や日本と英国その他西欧諸国との外交・通商関係について、外務省外交記録、雑誌記事・論文、政治家や外交官及び通産官僚、財界人等の回顧録やオーラルヒストリー等を収集した。加えて、関連分野である日本の国内政治や経済政策、アメリカ外交、イギリス外交、欧州統合・欧州国際関係、国際経済史、国際政治理論等に関する、洋書を含めた文献の収集も行った。 また、オンラインデータベースとウェブサイトを利用して、米国の外交文書、GATTの一次資料を収集した。とくにGATTの一次資料についてはWTO(世界貿易機関)のウェブサイト及びスタンフォード大学図書館のGATTデジタルライブラリーを利用して、GATT創設から日本加盟までの時期のGATTの資料を収集した。 第二に、自由貿易体制と冷戦との関連について考察を進めた。研究を進める過程で、GATTと冷戦との関係ひいては戦後の国際経済秩序である自由貿易体制と政治軍事秩序である冷戦がどのように関連していたのかという問題意識を持つに至った。そこで、大戦直後のアメリカの戦後秩序構想からブレトンウッズ会議とIMF(国際通貨基金)の創設、冷戦の開始を経て、ITO(国際貿易機関)の挫折とGATTの成立に至る過程について、自由貿易体制と冷戦との関連という観点から再構成を進め、現在論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
資料収集についてはおおむね予定通りに進んでいるが、上記9.に述べたように研究を進める過程で自由貿易体制と冷戦の関連に関心を持ち、当該研究の対象時期(1955~62年)以前のIMFやGATTの成立についての研究に着手することとなったため、全体としてはやや遅れている。ただし、自由貿易体制と冷戦との関連は当該研究の重要な背景であり、それを検討しておくことは、当該研究を進める上でもきわめて重要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、一次資料及び二次資料の収集とその分析に基づく論文作成が主軸となる。とくに以下の点に沿って研究を進めていく。 第一にこれまで収集した資料の分析を進めつつ、さらなる資料の収集に努める。とくにGATTの資料を収集する。第二に、自由貿易と冷戦との関連に関する論文を完成させる。第三に、高度成長期の日本の通商政策と国内政策との関連について考察を進め、論文を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ジュネーブのWTOライブラリーへのGATT資料調査を予定していたが、次の理由によりこれを見送ったことにより次年度使用額が生じた。第一にGATTの資料の多くがウェブサイトから入手可能であることが判明したため。第二に学内業務の関係で海外調査を実施する時間をとることが困難であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
海外資料調査を計画している。行き先としては現時点ではジュネーブのWTOライブラリーあるいはオタワのカナダ図書公文書館を考えている。前者についてはGATTの資料の多くはウェブサイトから利用できるといっても全てではないので、やはり現地に行く必要があると考えられるため。後者については、カナダは日本のGATT仮加入に際し重要な役割を果たしたが、カナダの外交資料は未開拓の部分が多く、調査する意義があると思われるため。
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