平成30年度は、①1950年代末から60年代前半の日英通商関係と日英それぞれの国内政治との関連、②戦後自由貿易体制と日英関係の関連を探求することを目的として、以下の四点を中心に調査・研究を行った。 第一に国内の図書館や文書館における資料調査である。国内資料調査については、いくつかの大学図書館、国立国会図書館、外務省外交史料館等において、戦後日本の貿易政策や日本と英国その他西欧諸国との外交・通商関係について、外務省外交記録、マイクロフィルム化された英米等諸外国の外交文書、雑誌記事・論文、政治家や官僚、財界人等の回顧録やオーラルヒストリー等を収集した。加えて、関連分野である日本の国内政治や経済政策、アメリカ外交、イギリス外交、欧州統合・欧州国際関係、国際経済史、国際政治理論等に関する、洋書を含めた文献の収集も行った。 第二に、海外資料調査を行った。英国国立公文書館にて1950年代のGATTと日英通商関係に関するイギリス外務省及びイギリス商務省の文書を収集した。とくに英国内の毛織物業界と商務省やマクミラン内閣との、日本との貿易自由化に関するやりとりについての資料を収集することができた。 第三に、池田勇人政権の外交と内政において「経済成長」が果たした役割の再検討を行ない、論文にまとめた(鈴木宏尚「池田政権と高度経済成長――外交・内政における経済成長ファクターの再検討」『立命館国際研究』31巻5号、2019年3月)。この論文では、経済成長がむしろ池田の自民党内の地位を動揺させ、それを池田が外交的成功によって回復させていたことを論じ、経済イメージが強い池田を「外政家」として評価することを提起した。 第四にIMF・GATT体制の成立について、英米両国による第二次世界大戦後の国際秩序の構築と冷戦の開始の交錯という観点からの再検討を行なった。
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