研究課題/領域番号 |
26380230
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 教孝 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (80334598)
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研究分担者 |
尾山 大輔 東京大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00436742)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サーチ理論 / 資産価格 / 異質性 |
研究実績の概要 |
本研究は、資産の転売によるキャピタル・ゲインを目的とする取引、すなわち「投機」、を分析の中心に据えることで、金融資産や不動産の価格がその実需を超える水準に上がってしまうメカニズムを解明することを目的としている。資産の転売をモデル化するために、本研究では「サーチ理論」と「ノイジー合理的期待理論」という異なる2つのアプローチを採用している。 サーチ・モデルによる転売活動の分析は、Mortensen and Wright,“Competitive Pricing and Efficiency in Search Equilibrium” International Economic Review, 2002 で提示されたモデルを基本構造として定め、これを拡張することで転売活動の解明を進めた。最初に、視野(horizon)に関する異質性を導入して分析を行った結果、転売活動が自発的に発生することを確認したが、資産価格バブルは発生しなかった。次に、資産評価に関する異質性をモデルに導入し、「資産に対する評価の低い人から安く買って評価の高い人に高く売却する」という活動の発生、特に、「資産の転売に特化するタイプの経済主体がモデル上で発生するのか」について分析を進めた。行うべき計算量が多いため、次年度も分析を継続する予定である。 ノイジー合理的期待モデルによる転売活動の分析は、Cespa and Vives,“Dynamic Trading and Asset Prices: Keynes vs. Hayek” Review of Economic Studies, 2012 を基本モデルとし、情報量に関する異質性をモデルに導入した。モデルの均衡がどのような条件で複数発生してしまうのかついて、その数学的条件を整理することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サーチ・モデルによる転売活動の分析は計画より分析作業が若干遅れているが、これは申請書の「研究が当初計画通りに進まない場合の対応」においてすでに想定していた範囲の遅れであり、解決困難な難題に直面した訳ではない。このリスクに対応すべく複数のプロジェクトを進めている。ノイジー合理的期待モデルによる転売活動の分析は計画よりも早めに進んでおり、全体としては目立った遅れはないと判断できる。さらに、研究を進めるなかで、当初計画していなかったような新しい分析結果も得ており、以上を総合すると、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
サーチ・モデルによる転売活動の分析については、異質性の存在が資産価格バブルを引き起こすための数学的条件を整理していく必要があるので、基本的には時間と労力を使って計算を進める以外に方法はない。また、転売に特化した経済主体の存在については、モデル化そのものが完了していないので、分析を複雑化させないように単純化させる工夫が必要となる。ノイジー合理的期待モデルによる転売活動の分析については、モデル構築が完了したので、今後はモデルを使って情報と転売活動の関係について分析を進める計画である。 全体としては、今後さらに分析を進める一方で、これまでに明らかにしてきた分析結果を論文の形にまとめて学会やその他の研究集会の場で発表する準備を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に行った支出の一部が、手続きの関係で次年度予算に計上されることになったが、実際には年度末の残高は千円を切っており、0ではないが誤差の範囲であり、実質的には次年度使用額はないといえる。
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次年度使用額の使用計画 |
千円未満なので、少額消耗品の購入、または、次年度末に発生しうる誤差の補填にあてる計画である。
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