研究実績の概要 |
本研究は、資産の転売を通じた投機的活動の解明を目的とし、サーチ理論ならびにノイジー合理的期待理論という2つのアプローチに対する理論的貢献を行った。特に重視したのがサーチ理論とその応用に関する理論分析である。 最終年度の平成28年度には Mortensen and Wright,“Competitive Pricing and Efficiency in Search Equilibrium,”International Economic Review, 2002 で提示されたモデルを不動産取引のモデルに修正し、転売活動のモデル化を行った。モデルの構造は代表的なバブルモデルである Tirole, “Asset Bubbles and Overlapping Generations”Econometrica, 1985 と類似しているが、分析の結果、金融資産のように資産価値が買い手の選好に依存しない場合、摩擦的市場であっても価格は適正、すなわち投機的バブルは発生しないことが分かった。この成果から、金融資産の価格が投機的になるためには、人々が異なる将来予測を抱くようなモデルが必要だと推測されたため、第二のアプローチであるノイジー合理的期待理論によって「高次の期待(higher order expectations)」を含むモデルの分析を進めた。 研究期間全体を通して見ると、転売活動に限らず広くサーチ理論に関連する研究において成果を挙げることができた。特に、サーチ理論を労働市場に応用した研究が、国際的評価の高い学会 Econometric Society が5年に一度開催するWorld Congressに採択され、カナダのモントリオールで研究成果を発表した。
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