この研究では日本の企業と消費者のインフレ期待の個票データを用い、企業では販売価格の先行き、消費者では普段買う物の価格動向の見通しを詳細に分析し、さらに業種別に販売価格見通しと実際のインフレ率の関係を調べた。その結果、デフレ期以降、特に加工型製造業製品の販売価格動向で、企業の期待が大きな役割を果たした可能性が示唆された。また消費者は利用できる情報を用いて期待形成を合理的に行っているか、実験的な枠組みに基づき分析した結果、期待は合理的で、金融政策当局の情報発信がその期待に影響するとの示唆を得た。本研究は企業や消費者の期待の先行きを考察するのに必要な期待形成のメカニズム解明の一助となったと考える。
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