研究課題/領域番号 |
26380234
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高宮 浩司 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40333588)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マーケットデザイン / メカニズムデザイン / マッチング / 社会選択 / ゲーム理論 / ミクロ経済学 / 経済理論 |
研究実績の概要 |
マッチング理論のマーケットデザインへの応用は多大な成功を収めてきたが、既存のそれはほとんど2部マッチングに基づくものに限られる。(なお、2部の片側のみに選好を持つものを1部マッチングと称する場合があるが、これも2部マッチングの一種とみなす。)本研究の目的は、非2部マッチングにまでマーケットデザインの適用範囲を拡大するための基礎の確立である。マッチングの既存理論の基礎を再検討し拡張することにより、既存路線から脱却したメカニズムの設計を目指す。そのために、計算機シミュレーションと他の研究者との意見交換の助けを借りつつ、理論的な究明を行う。 研究は3つの課題に分けられる:(A) 2 部マッチングで安定性及びインセンティブ条件がなぜ満足されるのかについて、既存の結果をより一般的な設定で再検討することで、その数学的な「起源」を明らかにする。(B) ルームメイト問題(及びその他の非2 部マッチング)の数学的構造を、2 部マッチングのそれと比較し関連付けつつ、明らかにする。(C) 上記2 つの結果を利用し、少なくともルームメイト問題において機能し、かつ今後の応用のひな形となるようなメカニズムを設計、提案する。 平成26年度は当初の計画通りに、上記の課題のうち(A)を中心に研究を進めた。2部マッチングの既存結果の抽象的社会選択環境への一般化について前年度までに既に得ていた理論的結果をさらに深化し、追加的な結果を得た。これにより、2部マッチングでなぜインセンティブ条件が成立するかを、安定マッチングを求めるアルゴリズムの性質と関連付けることで、ある程度解明することができた。これを7月に研究会(早稲田政経木曜セミナー、TCER研究会)で、さらに研究全体の展望を11月に研究集会(「応用ミクロ経済学の新展開」於札幌)で報告し、多様なコメントが得られた。これらは今後研究を進める上での貴重な投入となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り、研究は3つの課題に分けられる:(A) 2 部マッチングで安定性及びインセンティブ条件がなぜ満足されるのかについて、既存の結果をより一般的な設定で再検討することで、その数学的な「起源」を明らかにする。(B) ルームメイト問題(及びその他の非2 部マッチング)の数学的構造を、2 部マッチングのそれと比較し関連付けつつ、明らかにする。(C) 上記2 つの結果を利用し、少なくともルームメイト問題において機能し、かつ今後の応用のひな形となるようなメカニズムを設計、提案する。 平成26年度においてこれらの課題のうち(A)を中心に進めたのは計画通りであった。しかし、有用な理論的結果を得たものの、27年度以降の(B)(C)へ前進に向けて十分な理論的知見が得られたとは言い難い。とくに2部マッチングにおけるインセンティブ条件の成立に対して本質的な「郊外病院定理」と呼ばれる結果の理論的起源について有用な結果が得られていないことが深刻である。この点で(A)で得られるべき結果を自然に(B)へと接続してゆくには、前もってある程度(B)をすすめる必要があることが明らかになった。あと3年あるので、27年度以降(A)と(B)を並行的に行うことで、最終年度に(C)へとつなげてゆくことは十分可能と考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、他の研究者との意見交換を中心に、シミュレーションも織り交ぜつつ、理論的究明をすすめる以外にない。そのためには研究報告もさることながら、直接訪問によるインフォーマルな議論が最も有用なことが経験上分かっている。26年度には、諸般の事情でこのタイプの出張があまりできなかったことが研究の遅れに関係していると考えられる。27年度以降はより回数を増やし、活発に意見交換を行うことで研究を進展速度を上げたい。シミュレーションについては、26年度には行われなかったが、これは研究の進展が遅れたため、実施の必要が生じなかったためである。今後研究の進展につれ自然に実施の必要が生ずるものと思われるので、連携研究者の協力の下、適宜行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れとスケジュールの不都合により、当初計画していたほど出張ができなかった。また計算機設備の拡充、更新の必要性を再考し、現行のもので間に合わせた結果、それへの支出がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の推進方策にしたがい、他の研究者との議論、研究報告、シミュレーションの実施のため、国内外の研究機関などを複数回にわたり訪問する必要がある。したがって、そのための出張が主要な研究費の使途となる。とくに前年度にできなかった分の出張を含めて活発に行いたい。計算機設備の拡充、更新については、現行のシステムで対応可能かあるいは拡充、更新の必要があるのか、シミュレーションに協力する連携研究者と検討した上で、適切に判断し行いたい。資源投入のバランスについては、理論的究明の進展を勘案した上で、他の研究者との意見交換とシミュレーションのどちらかがより有効かを判断し、限られた資源を効果的に投入したい。
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