研究課題/領域番号 |
26380235
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
若井 克俊 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80455708)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済理論 / 意思決定論 / 資産価格理論 / 行動ファイナンス |
研究実績の概要 |
1.本研究は、先行研究“Alpha as Ambiguity: Robust Mean-Variance Portfolio Analysis”(Maccheroni et al., Econometrica, 2013))において提唱された「曖昧性回避をとらえる新たな平均分散モデル」を応用・発展させること目的としている。平成26年度においては、CAPM型の関係式を導出し、市場の期待超過収益率と各資産の期待超過収益率とを関係づける係数ベータに曖昧性回避度に基づいた調整を加えることを検討する予定でいた。しかし、研究計画提出後に同様の研究が他の研究者(Ruffino, 2013年12月)より提唱されたため、平成27年度に計画していた「低分散アノマリー(「分散が低い個別リターンから正の期待リターンが発生する」という現象)を資産収益率の曖昧性の違いから分析する研究を開始した。この研究では現実のデータから各資産の超過収益率における曖昧性と市場の超過収益率における曖昧性との関係を知る必要があるため、アルバータ大学ビジネススクールに在籍でRegime switching model等に詳しい渡辺雅弘准教授の協力を得て実証分析を行うこととした。現在、種々のセッティングのもと曖昧性の推計を行っている。
2.上述のRuffino(2013年12月)による分析では資産収益率を所与としているので「曖昧性回避」が均衡資産価格に与える影響は分析できない。他方、主観的確率を用いた分析ではQuadratic効用関数を用いることでCAPMを均衡式として導出し、主観的リスクと均衡資産価格との関係を分析している。同種の研究として平成26年度はKlibanoff et al. (2005)からRuffinoが提唱したCAPM型の均衡式が導出可能かを検証したが、それが現実的な仮定の下では不可能であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
曖昧性調整を加えたCAPM型の均衡収益率決定式を用いて低分散アノマリー分析する研究においては、現在は各資産の超過収益率における曖昧性の度合いを推計している段階であり、予定通りに進行している。
曖昧性回避をとらえる理論的モデルからCAPM型の均衡資産価格決定式を導出する研究においては、現在Klibanoff et al. (2005)とは異なる公理系に基づく関数表現モデルを検討中であり、予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1.曖昧性調整を加えたCAPM型の均衡収益率決定式を用いて低分散アノマリー分析する研究においては、低分散アノマリーだけではなく、他のアノマリー等も含めて理論・実証の両面から包括的に分析を行う。
2.曖昧性回避をとらえる理論的モデルからCAPM型の均衡資産価格決定式を導出する研究においては、意思決定者が捉える曖昧性の概念に明確な仮定を置くことにより曖昧性回避とリスク回避を分離できる関数表現モデルの導出を目指す。また、新しく導出した関数表現モデルを用いてCAPM型の均衡資産価格決定式を導出する計画である。
3.Klibanoff et al. (2005)を多期間の意思決定に応用したモデル(Klibanoff et al. (2009))を近似し、Maccheroni et al. (2013)が提唱した平均分散モデルの動学的拡張を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンピューターの購入を予定していたが予算が不足したので研究費を約30万円繰り越し、平成27年度に購入することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度から繰り越した研究費はコンピューターの購入にあてる予定である。また、平成27年度支給分の110万円はコンピューターの購入、学会参加や研究成果発表のための国内・海外出張、ならびに、論文の英文校正等に使用する予定である。
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