研究課題
平成28年度については、2つ課題のそれぞれについて以下の研究をおこなった。課題(1)セルフ・コントロール問題下の消費・貯蓄行動モデルの構築・近畿大学の張琳氏と共同で、知らずに消費が習慣化してしまうために消費が過剰になってしまうナイーブな子供と、その子供に対して所得移転を低く抑制する利他的な親のしつけ行動を子供自身の厚生の観点から分析できるモデルを開発し、Zhang and Ikeda (2016, International Review of Economics )として出版した。・セルフ・コントロールがメンタルなコストを発生させる消費者行動モデルを構築し、それが時間選好率にどのような含意を持つかを分析した。また、セルフ・コントロールによるメンタル資源の消耗を裏付ける科学的論拠となる文献をサーベイした。課題(2)セルフ・コントロール力の実証分析1.ストレスやセルフ・コントロールによる疲れ・消耗がセルフ・コントロール力に与える負の効果を検証するために、以下の2実験を行った。現在はその実験データを解析中である。・ラボ実験:独自で開発したストレス課題を課し、その前後で割引課題とクジ課題を課すことで、ストレスが選好に与える影響を検証する。・ウエブによるランダム化比較実験(RCT):負の生活イベントやコンプレックス、不安の度合いなどの質問でストレスをプライムしたグループと、しないグループで割引質問をし、ストレスプライムの効果を見る。2.不健康の度合いが双曲割引の有無とその自覚の有無でどのように異なるかを実証的に明らかにし、Kang and Ikeda (2016, Economics and Human Biology)として出版した。3.H26年度末に行ったアンケート調査のデータから、2型糖尿病患者が1型糖尿病患者や非糖尿病患者よりも高い双曲性と時間割引率を示し、同時により低いセルフ・コントロール能力を示すという仮説を支持する結果をえ、現在草稿を作成しつつある。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Economics and Human Biology
巻: 21 ページ: 122-136
https://doi.org/10.1016/j.ehb.2015.09.005
International Review of Economics
巻: 63, Issue 3 ページ: 281-303
10.1007/s12232-016-0255-2