平成28年度は、前年度に引き続き研究課題に関わる論文の作成を進め、各学会・セミナー等で報告を行うとともに、国際学術雑誌への投稿を行い、1編については掲載が決定し、1編については改訂要求を受け、再投稿を行った。さらに、これらの成果に基づき、新たな論文の執筆・発表も行った。 まず、論文「Anticipated Stochastic Choice」については、改訂を進める上で、注意効果(attraction effect)や順序効果(order effect)が意思決定者の認知能力と関連するという心理学・脳科学・マーケティング等における先行研究(Krueger and Salthouse 2011; Sherman et al. 2008; Tentori et al. 2001)とこの論文がより密接に関連していることが明らかとなった。この点に関して論文中で議論を深め、再投稿を行った結果、Economic Theory誌における掲載が決定した。 また、論文「A Multiattribute Decision Time Theory」については、国際学術雑誌に投稿を行った結果、技術的側面を中心にいくつかの改訂要求を受けた。平成28年度は、これを受けて改訂を進め、再投稿の後、再審査が行われている。この論文では、実験経済学や心理学における、葛藤の下での選択、最後通牒ゲーム、時間選好に関する意思決定時間を特徴づけられる統一的な枠組みを提示していることが大きな特徴である。 さらに、これらの研究成果をふまえ、メニュー選好と不完備選好の関係を論文「Incomplete Preferences and a Unique Subjective State Space」としてまとめ、各学会・セミナーなどで報告を行った。この論文については、平成29年度に国際学会で報告することも既に内定している。
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