「効用の年齢依存性」というテーマを最重要課題として研究を行なった。理論的に効用が年齢に依存して変化すること、そして満足度のデータを用いてそれを実証する研究である。結果「Biological and Economic Approaches Towards Behavior Along the Life Course」と「Explaining the U-shaped Life Satisfaction: Dissatisfaction as a Driver of Behavior」という2本の論文を仕上げた。前者はオーストリアのMichael Kuhn氏との共著で、後者は単著である。出版に関しては、前者は2020年3月にKuhn氏と会って最終確認しつつ投稿先を決める予定だったが、新型コロナウィルスのため中断してしまっている。一方、後者は「Journal of Bioeconomics」に投稿中である。また後者の論文を最終的に仕上げるにあたっては、ウィーンの国際学会に参加したことが非常に役立った。この分野の先駆者であるAndrew Clark氏とPaul Frijters氏と時間をかけて話し合う機会が得られたためである。この2本の論文を通じて、本研究課題の主目的である人間行動を生物学的に基礎付けし幸福度研究を用いてそれを実証するという研究手法を示すことができたと考える。 この他には「Son Preference and Parental Satisfaction」 (寺村絵理子氏、萩原里紗氏、佐藤一磨氏と共著) を仕上げた。諸処の事情で最終稿の作成が遅れてしまったが、現在投稿準備中である。 最後に、本研究課題をまとめる意味で「科学史からみた経済学の自然科学からの離反」という論文を作成しているが、こちらは予想通り時間がかかり、発表には至っていない。もう1年ほど時間をかけるつもりである。
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