研究課題/領域番号 |
26380245
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
丸田 利昌 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (60295730)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / 進化ゲーム / 被支配戦略の逐次削除 / ゼロ和ゲーム |
研究実績の概要 |
26年度の研究において,従来研究されてきた対称定和ゲームや純粋競争ゲームを包摂しながらも,それらを大きく拡張する2人対称ゲームの部分クラスとして,対可解ゲーム(pairwise solvable )を新たに定式化した.対可解性の視点からの進化安定戦略の考察は,本研究独自の新しい研究戦略である.これを受け,27年度には以下の結果が得られた.1. 対可解性とNashの意味での可解性との関係を明らかにした.特に,対可解ゲームが均衡を持つ場合,その均衡集合はNash可解であることを示した.2. 従来知られている利得関数の準凹性より許容的な条件として対角準凹性を定式化し,対角準凹性を持つ対可解ゲームには均衡が存在することを示した.3. 戦略集合が有限の場合,2.の結果はさらに強めることができる.すなわち,対角準凹性を持つ有限対可解ゲームにおいては,被支配戦略の逐次的削除が均衡集合に収束することを明らかにした.したがってこの場合,ゲームはNash可解であるのみならず,支配可解(dominance solvable) でもあることが判明した.3. 以上の理論的結果の応用として,対称2人ゲームの進化安定戦略均衡について,その存在の十分条件を示すとともに,対可解ゲームにおける進化均衡とNash均衡との効率性比較について確定した結論を得た.すなわち,対可解ゲームがそれぞれの均衡を持つとき,Nash均衡は進化均衡を必ずPareto優越する.5 労働経済学・公共経済学等の応用分野で盛んに研究されている「コンテストゲーム」「利権獲得ゲーム」が,対可解ゲームであることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対可解性を用いた進化安定戦略に関する研究は,既存研究に見られない新規性をもつものである.その一方,確率進化モデルとの統合については,今後の課題となっている.
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今後の研究の推進方策 |
対可解ゲーム,およびそれを用いて進化安定戦略に関して得られた諸結果を深化させるとともに,確率進化モデルとの統合に取り組む.得られた結果は随時国際学会で報告してゆく.
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度は新たな結果の発見,それらの一般化・精緻化が著しかったため,その進展を学会報告で公表する時間的余裕が得られなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
28年度は,すでに3件の学会報告が確定しており,さらに積極的に結果の周知を図る.
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