本研究は,混成動学における均衡到達メカニズムの考察を続けてゆく過程で,対可解ゲーム(pairwise solvable game)という全く新たなゲームのクラスを発見した.研究実績の概要は次の通りである. 対可解ゲームは応用上重要なゲームを多く含むのみならず,Nash可解性を持ち,さらには標準的な凹性条件のもと「支配される戦略の逐次削除」(IEDS) によって均衡が到達されることが判明した.特に均衡到達のメカニズムがIEDSによることが重要である.IEDSはゲーム理論の最も基礎的かつ初等的な概念用具の一つであり(「囚人のジレンマ」),それによって均衡プレイが正当化されるゲームのクラスを特定してゆくことの意義は大きい.実際,従来も教科書レベルでIEDSの実例としてHotelling 選挙モデルが紹介されることはあったものの,それが単なる「数値例」ではなく,一般的な結果がその背景にあることは明確にされていなかった.レント獲得ゲームやトーナメント・ゲームについては,IEDSによる可解性は全く新しい結果である.これら応用上重要なゲームにおいて,IEDSという初等的な概念用具で均衡プレイを説明してゆくことは,均衡の基礎理論のみならず,ゲーム理論の応用・教育,ひいてはその行動・実験経済学的吟味という観点からも重要である. 考察の結果は,論文「Two-person pairwise solvable games」 (http://www.nihon-u.ac.jp/research/institute/population/nupri/DP/nupriDP201602a.pdf)にまとめられ,現在,国際査読付学術雑誌に投稿,審査中である.また,この論文の内容は,内外三つの学会において口頭発表された.
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