曖昧な提携をともなうプレイヤーの協力関係をファジィ協力ゲームを用いて分析し、協力ゲームの解を市場メカニズムによって実現する方法とその限界を明らかにするとともに、集団的意思決定に関する様々な具体的問題を定性的・定量的に考察する。この研究目的を達成するために、伝統的な協力ゲームをファジィ化するためのファジィ拡張を定式化し、ファジィ・コアが元の協力ゲームのコアに一致するようなゲームの族とそのファジィ拡張を特徴付ける。コアが存在しない協力ゲームに対しては、Weber 集合と呼ばれる代替的な解概念を提示し、ファジィWeber 集合が元の協力ゲームのWeber集合に一致するようなファジィ拡張を特徴付ける。 上記の問題意識の下、最終年度は市場メカニズムによる解法の研究に専念し、無限次元財空間をともなうWalras均衡の存在と価格体系の特徴付けを分析し、完全競争モデルの雛形とも言える経済主体が連続濃度で存在する交換経済において、より一般的な結果を得ることに成功した。また、不確実性をともなう異時点間の意思決定問題において、潜在価格による最適条件の特徴付けに曖昧さが入り込む状況を分析した。これらの研究は三本の論文にまとめられ、それぞれ海外のジャーナルに公刊した。 四年間の研究期間を通じて、当初の目的であったファジィ協力ゲームの解の特徴付けについては、満足の行く成果を挙げることができた。また、これとは独立に市場メカニズムの解法についても、十分な知見を得た。今後は両者の関係を統合することを目標にし、財に対する選好が個人ではなく,提携ごとに与えられる経済においてWalras均衡の概念を定式化し、ファジィ・コア配分を市場メカニズムで実現する方策を分析したい。
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