公平な再分配についての実験研究を,日本および中国で実施した.当初の計画では曖昧であった最初の分配の決定を,(a)偶然,(b)危険選好,(c)努力に応じて決定される場合について調べた.ただし各被験者の初期所得は,(a) においては各被験者が所得カードを引くことで,(b)においては各被験者が安全な選択肢または危険な選択肢を選ぶことで(後者を選ぶと確率的に),(c)においては各被験者がジクソーパズルに取組むことで(成績に応じて)決定され,再配分は(再分配される対の)両人が再分配案を示し,いずれかの案が確率的に採用される.
京都産業大学と江南大学で,上記3設定の実験を実施した.実験は各大学の経済実験室で,実験参加者はすべて所属の大学生である.被験者数が十分でない(6実験合計144名)ため,統計的に有意な結論を得ていないが,おおよそ以下の結果を得た.(1) 3つの設定すべてにおいて,x(初期所得における自身への分配率)が大きいほど,y(再分配における自身への分配率)は大きい.(2) 日中両国ともに,yは,(a),(b),(c)の順で大きい.(3) 対応する設定ごとに日中の結果を比べると,yの傾きは中国における方が大きく,yの切片は日本における方が大きい.
他者の再分配案の推測および関連する実験(Knobe効果の実験など)も実施したが,結果は(上の結果と同様に)日中両国で定性的には同じであるが,定量的にはかなりの差が認められた.
|