研究課題/領域番号 |
26380253
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
安岡 匡也 関西学院大学, 経済学部, 教授 (90437434)
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研究分担者 |
林田 実 北九州市立大学, 経済学部, 教授 (20198873)
大野 裕之 東洋大学, 経済学部, 教授 (50285459)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会保障制度 / 財政学 / マクロ経済学 |
研究実績の概要 |
研究テーマは少子高齢社会における社会保障制度改革がマクロ経済に与える影響について分析することであり、具体的な研究内容は次の通りである。 介護に関する研究としては介護保険の自己負担の程度を変えることが社会厚生にどのような影響を与えるのかを分析した。この分析については、今後少子高齢化の進行によって介護保険の社会保険料がどの程度変わり、また若年世代と老年世代の保険料比率について、いくつかのケースで分析したものを含んでおり、日本における現実的な政策提言を出来得る結果を得られたものと考えられる。 年金に関する研究としては、年金の財源を保険料ではなく消費税でとった場合にマクロ経済でどのようなことが起きるのかについて分析を行った。保険料負担を減らす代わりに消費税負担を増やすことで世代間の不公平性が改善されることは既に先行研究で示されているが、本研究では、直接的な税負担の変化による公平性への影響だけではなく、労働市場を通じた間接的な効果を合わせると、世代間の不公平性がより大きく改善されることを明らかにした。 生活保護制度などといった公的扶助としての形の再分配政策に関する研究としては、その財源をどのような形で調達するべきかについて研究を行った。比較として労働所得税だけでなく、法人税と消費税の3つの税制を比較して分析を行った。その中で法人税による財源調達はマクロ経済全体の投資を減らし、それが国内総生産にマイナスの影響を与えることとなるので望ましくないことを明らかにした。 育児支援政策に関する研究としては、児童手当と教育補助政策といった形での給付ではなく育児のインセンティブを含むような年金制度で少子化対策を行った場合にどの程度代替的なのかを研究した。 以上の通り、様々な社会保障制度改革を考慮した分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度で予定していた研究分析については2015年度中に主たる分析を終えることができた。まだ学会報告段階であるので、査読付き雑誌などへの投稿はこれからであるが、これは当初より2016年度中に行うこととしていたので、予定通りのペースで研究を進めることが出来ている。
また、査読付き雑誌での研究結果の公表は、査読プロセスを考慮するとある程度時間がかかることを想定し、紀要やディスカッションペーパーでの2015年度での公表も当初想定していたが、想定通り、いくつかの研究論文について公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度までに行った研究論文を査読付き雑誌へ投稿する準備を行う。
加えて、2016年度には新たにいくつかの研究論文を作成する予定である。具体的には育児支援政策についてのより詳細な検討を行う研究であり、育児支援政策の有効性についての考察を行う。
さらに、現在では老年世代と若年世代が社会保障給付の面で対立関係にあることが指摘されている。(限られた税収の下では片方の世代に対する社会保障給付を増やすことが他方の世代に対する社会保障給付を減らすため。)しかし、本研究では老年世代に対する社会保障給付が若年世代のためにとっても望ましく、対立関係にはならないことを少子化対策の分析の枠組みで考察を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度中に海外の査読付き雑誌に投稿する前に英文校閲を受ける予定であったが、修正をより時間をかけて行う必要があったため、2015年度での英文校閲を行うことができなかった。従って、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度中に英文校閲を行う予定である。
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