研究課題
平成28年度も科研テーマ「少子高齢社会における社会保障制度改革がマクロ経済に与える影響についての分析」に沿って様々な現実問題に対する分析を行った。また、今年度以前に行った研究に関する論文の報告及び修正も並行して行った。今年度に行った研究の1つとして財源調達のあり方について検討を行った。具体的には、財源調達の配分を変えることでマクロ経済にどのような影響を与えるのかを考察した。国民年金の財源について保険料負担を増やし、消費税負担を増やすことでマクロ経済における労働需要が促進され、失業が減ることを導き出した。また、児童手当など少子化対策の財源を消費税で調達した場合についても分析を行った。マクロ経済の観点からは保険料や労働所得税よりも消費税で調達するのが望ましいことをこれらの分析では明らかにしている。財源をどの程度、消費税に求めるか、あるいは労働所得税や保険料に求めるかという問題は世代間の財源負担の問題と等しい。これらの研究は、世代間の財源負担のあり方をどうすべきかについて、ひとつの考える基準を与えるものと言えよう。また、これまでの多くの研究では長期的な分析を行っていたが、今年度は、短期的な分析も合わせて行った。1つは介護保険の存在によってマクロ経済にどのような影響を与えるか社会厚生を引き上げることができるかを長期的な視点から分析を行った。加えて、産業連関分析を用いて、短期的に総需要をどの程度引き上げるかも明らかにした。さらに、DSGEモデルを用いて、消費増税の短期的な分析、金融緩和政策による短期的な雇用変動についても考察を行った。これらの研究結果は、政策効果を考察する上では非常に参考になるものと言える。
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