研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、ワルラスにおける企業者論の全貌を明らかにすることである。 ワルラスの純粋経済学(一般均衡理論)においては、均衡状態に企業者が受け取るべき利潤がゼロとなることはよく知られている。本研究では、純粋経済学だけでなく、これまでほとんど研究がすすんでいない社会経済学と応用経済学にも注目することによって、ワルラスにおける企業者の現実的意味とそこにこめられた意図を明らかにすることを目的としている。 28年度は、26・27年度の研究成果をさらに発展させ、純粋・応用・社会経済学におけるワルラスの労働市場観とその政策的インプリケーションを、企業者概念を理解の鍵とすることによって示した英語論文 ”Leon Walras’ Concept of Labor Market in his Pure, Social, and Applied Economics” に まとめ、9月にローザンヌ大学・国際労働機関ILO共催のワークショップ The Wage Workshop, Theoretical, Empirical and Historical Perspective on Wage, Subsistence and Basic Incomeで報告した。これは「賃金」をテーマとして、学史研究者、理論経済学者、政策専門家たちが議論する学際的なワークショップであり、専門を超えて様々な反応を得ることができ、興味深い議論をすることがができた。ここで発表した論文は29年度中にある国際査読ジャーナルに掲載される予定である。 また27年度に発表した日本語論文「ワルラスのマルクス批判ー企業者国家論を中心に」の内容をさらに発展させ、29年度に公刊予定の共著本『経済とは何か』(ミネルヴァ書房)に寄稿した。
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