本研究は、ワルラスの企業者論の真の意図と歴史的意義を、純粋経済学(一般均衡理論)のみならず、社会経済学、応用経済学における議論にも注目することにより、解明した。 ワルラスの純粋経済学においては、企業者利潤は均衡状態においてゼロとなる。この非現実的な仮定は多くの経済学者たちから批判されてきたが、これまであまり注目されてこなかったワルラスの社会経済学・応用経済学において展開されている企業者国家論が、この企業者利潤ゼロの理論に基づいていることを示した。これにより、ワルラスのマルクス批判、シャルル・ジッドの利潤概念 との相違、ワルラス労働市場観の形成過程と労働政策の真の意図についても明らかにした。
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