本研究の目的は、両大戦間期イギリスにおけるエレノア・ラスボーンによる家族手当構想(家族手当法は1945年に制定)に焦点をあてて、その構想が福祉国家の起源であることを明らかにすることである。筆者はとくに、リヴァプール大学やロンドン大学Women's Libraryにおけるラスボーン文書など(Rathbone 1913、1917など)を調査することによって、ラスボーンによる当時の貧困地域(リヴァプールの港湾地区)におけるひとり親世帯(とくにシングルマザー)の研究に着目した。 そこで明らかになったのは、ラスボーンは、母性主義の視点を超えて無償労働であるケア(育児)の意味を解明しようとしたことである。
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