研究課題/領域番号 |
26380261
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
三田 剛史 明治大学, 商学部, 講師 (00624107)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済思想史 / 中華人民共和国 / 社会主義 |
研究実績の概要 |
1.資料収集と分析 1950年代の中国における社会主義化をめぐる論争に関する文献を収集した。主な史料調査の場所は、中国国家図書館、北京市内の書店・古書店、アジア経済研究所図書館などである。これらの資料調査、収集を通じて当時の経済論争に関する雑誌記事と論文、当時の政治経済状況を表す書籍類に目を通すことが出来た。そして、中国の社会主義化をめぐる論争において焦点となった問題をいくつかに絞り、関連する論文、記事の分析を進めていった。その結果、特に剰余価値をめぐる理論的・思想的な問題と、農業集団化という現実の経済政策を結びつけて、当時の中国の経済学者が論争を行っていることが明らかとなってきた。これについては中間報告をすでに下記研究会、国際研究集会で発表したが、2016年度の社会経済史学会全国大会でもさらに立ち入った研究成果を報告する予定である。 2.研究会等への参加 2015年度に京都大学人文科学研究所で発足した研究班「毛沢東に関する人文学的研究」に参加し、毛沢東時代の政治経済状況および関連する人文学的研究の成果に触れるようにした。また、2015年11月には同研究所で研究報告を行い、本研究の一端にたいし助言や批判を受けることが出来た。 3.国際研究集会での報告 2015年12月に京都大学で開催された第4回「中国当代史研究工作坊」において「経済学上的毛沢東」と題する報告を行った。同研究集会では日中両国の中国近現代史専門家が参加しており、特に中国の専家からの意見を聴くことの出来る貴重な機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
必要な資料収集を順調に行うことが出来た。また1950年代の中国における社会主義化をめぐる経済学的論争の焦点をいくつかに絞り込んだ。この論争に参加した論客は、おもに1940年代までに知的蓄積を行ってきた経済学者であるが、彼らの学問的背景にも考慮しつつ論争の内容を読み進めていくことが出来た。ただ、北京以外を舞台とした論争についてはまだ目を通せていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.研究成果の発表 まずは2016年6月に開催される社会経済史学会全国大会でこれまでの研究成果について報告を行う。また、京都大学人文科学研究の研究班等で機会をみて中間報告を行っていく。年度の終わりまでには成果を論文にまとめる。 2.資料調査 これまでに収集した関連資料は、主に北京で発行されたものである。政治の中枢に近い北京と、それ以外の都市では経済学者の学風にも当然差異があり、北京以外の中国の都市の大学や研究期間でどのような論争が行われていたのか、さらに資料収集を進めたい。また、出来れば当時の論争を知る学者に聴き取りも行いたい。その際は個人情報等に十分に注意する。 3.論争の分析 これまでは主に反右派闘争以前の経済論争について研究してきたが、中国の経済学会への政治の影響力がさらに強まる反右派闘争以後文化大革命までの間、論争がどのようになっていくのかについても分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
北京以外への中国の都市での資料収集、聴き取り調査などを行いたかったが、先方の都合が付かなかったり、所属大学の他の業務のため日程がとれなかったりして実行できなかった。そのため、年度を繰り越してあらためて中国への出張を実行したい。
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次年度使用額の使用計画 |
おもに上海、杭州、重慶での資料調査を計画している。これらの地では北京とはまた違った雰囲気の中で経済学的論争が行われたと思われ、北京では見られない資料が見られる可能性がある。
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