最終年度である2017年度も資料収集を行った。日本では閲覧、複写することの難しい第二次世界大戦終戦前後、1940年代の経済学者の言論に関する記事・論文を収集することが目的であった。朱紹文、巫宝三をはじめとする非マルクス主義系の経済学者は、政治的原因により1950年代後半以降その活動を厳しく制限されていくが、中華人民共和国成立直前の時期までは、マルクス主義や共産党の指導にとらわれない研究、言論活動が行えたことがあったことが分かった。また、管見ではそれらの経済学的業績が日中両国において十分な検討がなされた形跡がない。そこで2017年度は、北京の中国国家図書館、上海図書館等において、中華人民共和国で活躍する経済学者の1940年代の業績を収集することに重点をおいた。 本研究の開始当初は、文化大革命まで、つまり1950年代から1960年代半ばまでの経済学者の活動を追求することに重点をおこうとし、いくつかの成果も提出した。ただ、この時期の中華人民共和国の経済理論・思想の展開を探るうえでは、人民共和国建国前後で同一経済学者の業績を追跡することが必要かつ有用であることに思い至った。またその前提として人民共和国の経済学者が経済学を修得していった1930年代に関する研究も必要となった。研究の3年目から方針を転換し、特に1940年代の研究に重点を移したため、研究期間の最後の方まで資料収集を行うこととなった。 このため、資金を受けられる研究期間は終了したが、収集資料の分析がまだ十分ではない。研究期間終了後も、この課題に対する研究を継続し、科研費による成果として発表していきたい。
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