研究課題/領域番号 |
26380263
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
喜多見 洋 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (30211197)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ピエール・プレヴォ / 文芸共和国 / 知的ネットワーク / 啓蒙 / 人口論 / ジェイン・マーセット |
研究実績の概要 |
平成26年度は、研究課題「ピエール・プレヴォの経済学と啓蒙期ヨーロッパの知的ネットワーク」のうちピエール・プレヴォの経済学を中心として研究を進めた。それにより明らかになったのは、次のとおりである。 まず初期のプレヴォは、ルソーの『政治経済論』を意識して経済を財政管理あるいは統治といった意味で理解し、経済学も政治体の秩序ある統治の学といった意味で捉えていたが、その後スミスの『国富論』に接してからはこれを高く評価し、1790年代前半には経済学を諸国民に普遍的富裕と繁栄をもたらす「富の理論」と考えるようになった。そして、1790年代後半には、新たに登場したマルサス人口論に注目し、人口と富を経済学における二つの重要なテーマであるとして、富についてのアダム・スミスの見解が、人口の原理についてのマルサスの見解と組み合わせられるべきだと考えるようになる。その後のプレヴォは、基本的見解は大きく変化しないものの、19世紀に入ってから新しく登場するリカードゥ、セー、シスモンディら、スミスの次の世代の経済学も視野に入れ、機械の導入がもたらす影響も意識するようになる。そしてプレヴォの経済思想の核心は、経済学を諸国民に普遍的富裕と繁栄をもたらす富の科学であるととらえ、スミスが『国富論』で体系化した富の理論とマルサスが『人口論』で示した人口の原理をもとに富と人口の関係を明確にし、これらを組み合わせて一つの体系を作ろうとするところにあった。 以上の研究の成果は、その一部がすでに『ピエール・プレヴォの経済思想』として一橋大学社会科学古典資料センターのStudy Series No.71(平成27年3月)に発表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
そもそも本研究は、18世紀末から19世紀はじめにかけてジュネーヴのアカデミーの教授であったピエール・プレヴォの経済学について、同時代のヨーロッパ的規模で広がっていた知的ネットワークとの関連を意識しつつ解明しようとするものであった。 初年度の緊要の課題は、プレヴォの経済学を研究するのに必要な文献、資料の確定とその収集さらに研究へのすみやかな着手であり、少なくともプレヴォの経済学関連の文献、資料については、おそらく日本で類を見ない文献、資料をそろえることができたといってよいだろう。そして、これらをもとにプレヴォの経済学についての研究も無事に開始することができ、その成果の一部は、すでに一橋大学社会科学古典資料センターから『ピエール・プレヴォの経済思想』(Study Series No.71)として発表されおり、初年度の達成度は、「おおむね順調に進展している」としてよいだろう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成26年度に行なったプレヴォの経済学についての基盤的研究をもとに、プレヴォの著作を中心とした文献的研究をさらに深めるとともに、啓蒙期ヨーロッパの知的ネットワークに関する書簡、マニュスクリプト類を中心とした研究を並行して進めことにしたい。特に、ヨーロッパの知的ネットワークに関する研究では、プレヴォとイギリスとの関係に注目しながら当時のヨーロッパに地下水脈のように広がっていた知的ネットワークの実態把握に着手するつもりである。
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