研究課題/領域番号 |
26380265
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研究機関 | 大月短期大学 |
研究代表者 |
内藤 敦之 大月短期大学, 経済科, 教授 (40461868)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知資本主義 / 金融化 / ポスト・ケインジアン / レギュラシオン理論 / レジーム論 / マクロ的不安定性 |
研究実績の概要 |
本年度は主として基本的な文献のサーベイを中心に研究を進めた。第一に、金融化論に関しては基本的な文献のサーベイを行い、その主要な論点の検討を行った。また、内生的貨幣供給論との関係を考察するために、金融市場に関する議論を中心にサーベイを行った。第二に、認知資本主義論に関しては、金融主導型レジームとしての側面を金融化との関係でサーベイを行った。また、政策面に関しては、ネオリベラリズムとの関係を中心に検討した。第三に、経済思想的な面においては、ケインズの「金利生活者の安楽死」論の形成とその内容についてサーベイ及び考察を行い、既に執筆中の論文の改定作業を行った。さらに、ネオリベラリズムについても基本的な文献の収集とサーベイに着手し、来年度以降作成予定の論文の準備を行った。 本年度は成果としては、第一に、認知資本主義レジームのマクロ的な不安定性を検討する論文を作成した。これは2015年度に論文集(『認知資本主義―21世紀のポリティカル・エコノミー』山本泰三編、ナカニシヤ出版、6月刊行予定)の一章となる予定であるが、2014年7月には草稿の検討会を行い、認知資本主義に関する様々な論点について議論を行った。第二に、同じ内容で経済理論学会第62回大会(2014年10月)において認知資本主義をテーマとする分科会で報告を行った。第三に、進化経済学会第19回大会(2015年3月)において、企画セッション「認知資本主義」というセッションの司会を務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、文献のサーベイに関してはほぼ予定通り進み、また、文献の検討及び論文の準備作業に関しても、順調に進んでいる。なお、成果の発表に関しては、認知資本主義に関する論文集へ投稿したものは編集作業が遅れたため、2015年度刊行予定となっている。また、報告に関しては予定通り行った。このため、全体としてはほぼ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は、基本的な文献のサーベイを引き続き行うとともに、金融化の理論的な検討、及びマクロ経済レジーム論としての構築を行う。基本的な文献のサーベイ及び理論的、経済思想史的検討に関しては、第一に、引き続き、金融化論の理論的な面を中心にサーベイを行う。特にミンスキーの金融不安定性論に注目する。これは、景気循環論的な枠組みではあるが、一種の金融化論でもあり、金融危機を考察する際には重要な議論である。ここでは、金融化の過程を中心に検討を行う。また、内生的貨幣供給論における金融化の位置付けを考察する。第二に、マクロ経済レジーム論に関しては、引き続き、サーベイを行うとともに、金融主導型レジームの特徴と問題点を明らかにする。第三に、認知資本主義論に関しては、認知資本主義論における金融化の位置付けとネオリベラリズムとの関係を考察する。第四に、金融化の過程を理論的に明らかにするために、基本的なマクロ経済データの収集を行い、次年度における単純な実証的分析のための準備作業を進める。第五に、ケインズの「金利生活者の安楽死」論以外の金融に関する議論の検討を行い、ケインズの理論及び政策論との関係を考察する。また、その現代的意義についても検討を行う。 研究成果の発表に関しては、第一に、金融化論の理論的な基礎を主題とした報告を進化経済学会等で行う。報告後、原稿を修正し、『季刊 経済理論』等へ投稿する。第二に、貨幣的循環理論への金融市場への統合の試みについて、ポスト・ケインズ派経済学研究会等で行う。第三に、ケインズの「金利生活者の安楽死」論に関する論文を完成させ、海外の雑誌に投稿する。
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