研究実績の概要 |
本年度は、基本的な文献のサーベイだけでなく、金融化の理論的検討を中心に研究を進めた。第一に、金融化論の理論を中心にサーベイを行った。特にミンスキーの金融不安定性論に注目した。第二に、金融主導型レジームに関しては、その特徴と問題点を検討した。第三に、認知資本主義論に関して金融化とネオリベラリズムの関係を検討した。 本年度の成果としては、第一に、「「金利生活者の安楽死」論の現代的意義」という題で第5回ケインズ学会(立正大学)において報告を行った。第二に、これをもとに「「金利生活者の安楽死」論の現代的意義」(『大月短大論集』第47号、2016年3月)を発表した。この論文では、ケインズの「金利生活者の安楽死」論を検討し、特にその現代的意義として、ケインズの長期ヴィジョンとそれが実現しなかった要因としてのネオリベラリズムについて金融との関係を考察した。第三に、認知資本主義論に関しては、2016年4月に刊行予定の『認知資本主義』(山本泰三編、ナカニシヤ出版)の内容を元にしたセッション「認知資本主義の展開」を第40回社会思想史学会大会(関西大学)において企画した。第四に、"Controversies on Endogeneous Money, Finance and the Multipliers: Classical Debate on Interest Rates in 1930s and Two Modern Controversies of 1980s and 1990s"(Post Keynesian Review, Vol. 3, No. 2, http://js4pke.jp/pkr/PKR/2015/201506naito.pdf)を発表した。これは、ポスト・ケインジアンにおける投資ファイナンスを巡る論争を、『一般理論』刊行後の利子率を巡る論争と結び付け、考察している。
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