本年度は、研究の目標を達成すべく、理論的、経済思想史的な検討を中心に作業を行った。第一に、内生的貨幣供給論における金融化の位置付けに関して検討した。特にミンスキーに注目した。第二に、金融化の仮定を統合したマクロ経済レジームの考察を行った。第三に、金融化と所得分配に関する政策論的な検討を行った。第四に、ケインズにおける金融化と関連する議論の経済思想史的な検討を行った。 本年度の成果は、第一に、2016年5月に刊行された『認知資本主義 21世紀のポリティカル・エコノミー』の第1章「認知資本主義-マクロレジームとしての特徴と不安定性」において、認知資本主義レジームにおける金融化の意義とその効果を考察した。第二に、「ミンスキーと流動性選好」という題で第6回ケインズ学会大会において報告を行った。ここではミンスキーがケインズの流動性選好概念をどのように理解し、また、どのように用いているかを金融不安定性仮説との関係も含めて検討した。第三に、「ポスト・ケインジアンにおける計算貨幣説の展開」という題で2017年3月に政治経済学ワークショップ(東京大学経済学研究科)において報告を行った。ここでは信用貨幣論の基礎となる計算貨幣の概要と意義について考察した。第四に、2017年3月に"Inflation targeting policy and the theory of natural interest rate"という題でInternational Workshop on Classical Economists and Classical Monetary Theory 2017(立教大学)において報告を行った。ここでは、インフレーション目標政策が自然利子率論とどのような関係にあるかをヴィクセルやケインズに遡って分析した。
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