本年度は(1) "Bayesian estimation of the beta-type distribution parameters based upon grouped data"と(2) "Approximate Bayesian computation for Lorenz curves from grouped data",(3) "Regional growth and Business cycle in Japan"を完成させるべく,学会や各種研究集会において,精力的に報告を行ってきた。 これらの研究のうち,(1)と(2)は所得格差の要因分析の基礎となる,一般化ベータ分布に関する論文であり,(3)は景気循環から見た格差の要因分析の論文である。特に,(1)と(2)は所得格差を分析する際に用いるジニ係数を計算する際,所得分布のパラメータを直接推定した方がよいのか,あるいは,ローレンツ曲線のパラメータを推定した方がよいのかを検討した重要な結果であると考えている。これらの論文は現在までのところ,雑誌に掲載するまでには至っていないが,掲載に向けての準備を進めているところである。 しかしながら,研究期間を通じて,(4)「道路利用における直接効果と間接効果の計測」を日本統計学会誌に,(5) "A random walk stochastic volatility model for income inequality"をJapan and the World Economyに,(6) "Simulation studies comparing Dagum and Singh-Maddala income distributions"をComputational Economicsに掲載することができた。 (4) は道路利用から見た格差の要因分析であり,(5)は所得分布の要因分析に対するモデリングを考えた論文であり,(6)は(1)や(2)の基礎となる所得分布に関する研究である。従って,所得格差の要因を分析するための基礎的な部分については,一定の成果があったと考えている。
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