本研究課題は,非定常・非線形モデリングに基づくマクロ経済学の実証分析を行う際に有益な新しい手法の開発,統一的に分析できかつ容易に実行可能なアルゴリズムの提供,マクロ経済政策分析への応用を目的とする.その中で,平成26年度は特に,定常VARMAモデルに対する因果性測度の推定・検定アルゴリズムを用いて,偏因果性測度の検定方法として提案しているモンテカルロ・ワルド統計量の小標本特性の分析を行った.定常VARMAモデルを推定するときに最終的には非線形最適化問題に帰着するが,シミュレーション分析の結果,そこで用いられる準ニュートン法におけるパラメータの更新方法により,最終的に得られる検定統計量の小標本特性が大きく異なることが明らかになった.実際に分析に使用する際には,データの数があまり多くないという問題があるため,さらに最適化の方法により結果が大きく影響を受けるということは好ましくない.そのため初期値の統計的性質を受け継ぎつつ,効率的な推定値を探すという問題を検討することは,実務上重要な問題であると言える.また,地方の財政データを用いてThresholdモデルに基づき,地方交付税交付金と各種歳出費目との間の因果性分析を行った.現在,結果の頑健性を確認しているところである.その他に,非線形モデルのサーベイを行い,特に多変量GARCH型やSV型,可変パラメータモデル,マルコフ・スイッチングモデルに基づくファイナンスデータを用いた実証研究についての整理を行った.
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