研究課題/領域番号 |
26380274
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藪 友良 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (90463819)
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研究分担者 |
新谷 元嗣 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00252718)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 介入 / 円ドルレート / 運用利益 / 外貨準備 |
研究実績の概要 |
財務省が1991年以降の為替介入のデータを公開して以後、介入についての実証研究が急速に進んできた。しかしながら、1991年以前については、データ公開されていないこともあり、実証研究は滞っている状況がある。1991年以前も介入が活発に行われてきたことを考えると、こうした状況は望ましいものではない。 本研究では、1971-91年について、信頼できる月次データを推定・整備した。先行研究では、介入を推定するため、外貨準備の変化もしくは、「財政資金対民間収支」(以下、「対民収支」)の「外国為替資金」を用いて、介入額を推定していた。しかし、外貨準備の変化では、金利収入を除外する必要があるが、金利として何を用いるか明らかではない。また、対民収支でも、対民収支をそのまま使うのか、「為券発行償還調整」もしくは「為券公募発行市中償還調整」を差し引くほうがよいのかは明らかではない。このため、1991年以降の介入データを用いて、これらの推計方法のうち、どれが最も介入額を正確に推定できていたのかを調べた。その結果、外国為替資金を「為券公募発行市中償還調整」で差し引くケースが最も優れていたことがわかった。 このデータを用いて、過去44年間(1971年8月-2015年3月)にわたる、為替介入とその結果としての外貨準備保有による利益の推計を行った。その結果、利益は計27兆円、その内訳は売買差損1兆円、評価差益13.3兆円(2015年3月末現在)、運用差益14.7兆円であった。評価差益の損益分岐点は85円となった。また、外貨準備(外為特会)を、過去の介入のみならず利子収入が蓄積していく投資ファンドとしてみなした場合には、利益の一部を一般会計に繰り入れる現実的な仮定を置くと運用差益は50兆円にのぼることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予期していないことは生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
新たに推定・整備されたデータをもとに、介入の反応関数、介入の効果などを推定する予定である。ただし、月次データでは内生性の問題があるため、Chen, Watanabe, and Yabu (2012)を用いて内生性を除去することが必要となるだろう。また、非線形トレンドの推定に関しては、Frequencyを既知としていたが、これを未知としたモデルを推定・検定する方法を考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外にいたこともあり、予定通りに支出をすることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果を発信するため積極的に学会に参加したり、共著者との打ち合わせのための出張費などとして、支出する予定です。
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