平成28(2016)年度には、経済統計研究会を5回開催した。本研究の目的は、公的統計の集計における統計モデルの利用にある。このため、実際の集計において発生している問題点について、それに携わる実務家から情報の提供を受ける必要がある。経済統計研究会はその情報源と位置付けられる。 平成28年度に実施した研究会のテーマを列挙する。(1)5月28日(土)15:00-16:50「海外アウトソーシングを巡る統計的課題について」、(2)6月18日(土)15:00-17:40「国民経済計算(SNA)と基準改定:2008SNAへの対応」、(3)6月22日(土)15:00-17:30「産業連関表について:平成23年産業連関表を中心に」および「農林漁業及び関連産業を中心とした産業連関表(飲食費のフローを含む。)について」、(4)年11月19日(土)15:00-17:20「税務データを用いた分配側GDPの試算」、(5)2月25日(土)15:00--18:00「企業ネットワークに関する実証研究の紹介:ベトナム農村・日本全体・世界全体の企業データを利用して」および「経済センサスにもとづく企業グループ別集計」。 とくに、統計調査に基づく一次統計と、それを利用して集計される加工統計(例:SNA)との間で、モデルに関する見方が異なることが浮き彫りになった。象徴的には、外れ値に対する考え方が異なる。一次統計では観察値が第一に尊重されるべきものであるのに対して、加工統計では時系列的な安定性が重視される。この様な差は、後者がそもそも何らかのモデルを前提に体系化されていることに原因がある。 現在は、研究会で得られた問題点を整理し、論文の作成を進めている。
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