本研究は,金融危機後の先進各国の住宅金融・住宅市場の変化を,各国の住宅金融システムの相違を考慮した,家計の住宅ローン選択・需要行動及び住宅需要行動の違いから分析した国際比較分析である.住宅金融システムの相違が,借手行動を通じて住宅金融市場,ひいては住宅市場の変化の違いをもたらす.類似の持家率ではあるが,住宅金融システムが大きく異なるオーストラリア,イギリス,日本を対象にした.前年度に続く3か国パネルデータの整備を完了し,推定作業を行った.具体的に本年度の研究実績を以下の4つに分けて記述する. (1)前年に行った3か国の状況の比較分析をさらに詳しく記述し,かつアップデートした.特に日本については,住宅を含む家計資産の状況の記述を加えSSRNに掲載した. (2)3か国のパネルデータベースが完成したので,それをを用いて,国別の住宅ローン選択・住宅ローン需要関数,住宅需要関数の同時推定を行った.さらに3か国のプールデータを用いても同様な推定を行った.3か国の借手行動の違いが明らかにされた.査読付き国際雑誌に投稿し掲載が確定された. (3)住宅資産は家計資産の中で非常に大きな割合を占めている.特に若年家計においては重要である.しかるに,日本のみならず先進各国で若年持家率の低下がみられ,問題となっている.特に低下が顕著である日本に焦点を当て,信用制約との関連で分析を行った.住宅購入時期の遅れという観点から,質的変数の同時推定モデルを用いた.若年世帯は信用割当を受け住宅購入を遅らせていることが明らかになった.論文にまとめ,査読付き海外雑誌に投稿した.査読者のコメントに従い改訂し再投稿し現在結果待ちである. (4)前年度から継続して,日本における家計の住宅ローンタイプの選択問題の分析を行った.今年度はさらに,住宅需要との同時決定モデルを推定したが,まだ改善の余地がありミメオにまとめた.
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