研究課題/領域番号 |
26380278
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
片山 直也 関西大学, 経済学部, 教授 (80452720)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 仮説検定 / 外れ値 / ロバスト / 構造変化 |
研究実績の概要 |
今年度は大きく分けて二つの結果を得た。 一つ目は合理的バブルの検証に有効な外れ値にロバストな検定手法の開発である。従来の単位根検定と同様に、外れ値がある場合、合理的バブルがあるのかどうかの単位根検定統計量は負の方向に外れた漸近分布をもち、バブルが発生しているにも関わらず、単位根過程(バブルが発生していない)という結論になることを導いた。外れ値はバブル期前後に発生することは容易に想像されるため、従来の単位根検定の手法は有効ではない。そのためMM検定統計量を用いた検定統計量を提案し、外れ値に対するこの検定のロバストネスを導いた。 2つ目はSVARモデルを用いた日銀の金融緩和政策の検証である。近年の日銀の異次元の金融緩和政策についてその有効性は議論が活発に行われているが、計量経済学的にその有効性が確認されたわけではない。SVARモデルによる検証は有効であることが知られているが、因果順序をあらかじめ指定しなければならないという欠点があった。本研究では、因果順序を検証する検定ならびに推定手法にロバストな検定方法を開発した。これらの結果はイタリア・カナダのセミナーと国際会議で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定した合理的バブルの検証や日銀の金融政策に有効な手法が開発できる見込みで順調であると判断した。 研究計画を作成した時点では、シミュレーションによる有限標本の実験や、実証分析は、時間の面で不安があった。しかし、研究成果をセミナーや学会で発表して、研究の交流をある程度行うことができた。そのうえで、上述の2つの研究はいずれも共同研究に発展する派生し実証研究面での協力が得られそうである。今後は国内外の時系列データに明るい研究者(台湾・イタリア)と協力してシミュレーションや実証分析を行うことを考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
一つ目は合理的バブルの検証に有効な外れ値にロバストな検定手法の開発については、理論的な拡張が望まれる。一つは誤差項の条件の緩和・自己回帰モデルの次数の緩和・バブルの発生数の緩和である。またMM検定統計量のみならず、ダミー変数を用いた単位根検定も考えられる。今後はこれら手法の開発ならびに実証を行う予定である。実証面では、日本の不動産バブル・ITバブルのみならず、EUでの不動産、台湾での不動産バブルなど現状でもバブルと思われる事象があることを知った。国内外の研究者と協力してこれらの問題に計量経済学の立場から貢献したいと思う。
2つ目のSVARモデルを用いた日銀の金融緩和政策の検証については、因果関係の検定の有効性の検証がまだ不十分であることからそれらの検証を行う予定である。提案した検定が、因果性順序に対して有効な検定となっていることを理論とシミュレーションの両面から検証する予定である。また私が分析する限り、どうやら日銀の金融緩和政策には物価へのチャンネル(因果関係による効果)がかなり弱い。これは近年の経済統計を見てもそうであるし、私が分析した2013年までのデータでも同じことが見られた。これらをどうやって評価し、わかりやすい形でまとめるのかも今後の課題である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H27年度はサバティカル年度にあたるため、研究設備の購入などを見込んでの予算計上であったが、サバティカル先(国立成功大学・台湾)の研究環境が思いのほかよく、必要な研究用品を買う必要がなくなった。そのため、使用しなかった分が予算として余った。
|
次年度使用額の使用計画 |
H27年度に本来使用する予定だった研究設備の購入は不要となった。そのため、シミュレーションに用いるPCとその周辺機器が、更新時期に来ているため、それらの購入に回す予定である。また、海外の台湾の研究者との研究の打ち合わせに使用する予定である。
|