研究課題/領域番号 |
26380278
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
片山 直也 関西大学, 経済学部, 教授 (80452720)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 合理的バブル / 単位根検定 / 外れ値 / ロバストネス |
研究実績の概要 |
H28年度では、合理的バブルの枠組みで、このような外れ値や裾の重い分布がどういう場面で起こりうるのかを考えた。具体的には、バブルの沈静期、生起、拡張、崩壊、沈静のサイクルが経済の中で起こっているとき、これがどのような経済モデルとして表現されうるのかを考えた。 調べてみると、経済モデルは、合理的バブルの条件:(a)合理的期待の恒等式を満たすこと、(b) 正の値をとること、がすべての時点で満たすことが要求される。一方、これに対応する計量経済モデルには、これら(a),(b)を満足するような自己回帰モデルがないことがわかった。これでは、現状で行われている単位根検定を使うことの妥当性がないことになる。 この問題点を鑑みて、H28年度の8月前の台湾出張前にバブルのサイクル中の各ステージで、(a),(b)を満足するような自己回帰モデル表現での合理的バブルモデルの設計をはじめた。台湾出張前後で求められたモデルは、外れ値を加味した自己回帰モデルが求められた。計量経済学では外れ値は外生的に起こるもので、モデル作成で内生的に外れ値が求められるというのは私が知る限りないように思われたので、非常に興味深かった。 さらに実証研究として、日経平均株価で90年代のバブル期に、このモデルを当てはめて検証を行ったところ、1987年7月に外れ値が確認された。昨年度の研究からも理論的に調べてわかっていたが,外れ値の存在はバブルの検知を遅らせることが分かっている。今後も同じように外れ値が起こった場合、つまり、この外れ値はバブルの検知を妨げる可能性がある。 H28年8月以降はこの研究をまとめて発表(台湾出張での2回・広島経済大学・関西計量経済学会)を行い概ね評判が良かった。これらは計量経済学者向けの発表であったが、景気循環や不動産バブルに興味を持つ経済学者向けの発表も行うことで、今後の研究の糧にしていきたいと思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究はH29年度の研究ゴールに近い成果であった。研究あるいは研究発表を通じてこの研究はいくつかの発展の指針があると考えられる。多くは実証研究や計量経済モデルの発展に関するものである。 研究計画書を作成した当初は経済理論モデルベースから非正則な状況(外れ値つきのモデル)が登場することは想定していなかった。そのため、昨年度の結果は予期していないアイデアだが、これは貢献度の高いアイデアで面白いと思うので、H29年度も引き続き、これに注力することに意義があると考えている。この点、研究は順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況の欄で記入したように、研究は合理的バブルの方面で順調に進展している。また、この合理的バブルの研究は共同研究を実行中である。
一方、H30年に、私は理論研究としてM検定の理論的な改良を行うことを計画していたが、近年、似たことをしている研究がみられる。そのため、この研究を行うことは中断して、この合理的バブル関連の研究に注力すべきだと思う。
この2点から、H29年度の研究ゴールをH30年度まで延長する形で研究を拡張していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究応募時はサバティカルにあたる2015年度の機器などの購入費用や旅費が発生すると予測していたが、学内予算で旅費が賄うことができ、機器も滞在先の国立成功大学の研究環境が思いのほかよく、必要なかった。そのため、2015年度の予算を余らす形で次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
最近Windows2010にアップデートしたところ、すこぶる調子が悪く、PC自体もそろそろリプレースメントが必要となっているので、2015年に計画していたPC機器購入を行う。また台湾など海外研究者との共同研究や研究発表費用に充てようと思う。
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