研究課題/領域番号 |
26380291
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10377137)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境政策 / エネルギー政策 / 排出権バンキング / 不完全競争 / 動学 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、平成26年度の理論分析をベースとして、現実の市場データを使った排出権バンキングのシミュレーション分析を行い、理論的な考察結果を検証した。具体的には、米国カリフォルニア州の現実の電力取引とCO2排出のデータを用いた。 5期間のシミュレーションモデルを構築して分析を行った。完全競争下では、排出権価格は、パラメータとして設定した割引率7%と同じ率で上昇した。これに対して、不完全競争下では、排出権価格は割引率7%よりも大きな率で上昇し、特に終盤の第4期から第5期にかけては16%の上昇を示す結果となった。さらに、政府が各期に許可する排出権の配分を変えるケースとして、前半の第1・2期に多めに配分して、終盤の第4・5期に少なめに配分する状況をシミュレーション分析した。その結果、不完全競争下の排出権価格の上昇度合いはさらに高まることが示された。理論的な分析から予想されたように、不完全な競争・裁定のもとで支配的企業が戦略的に行動し、前半の期に排出権価格を下げる方向に操作して、排出権を安い価格で購入して使用せずにバンキングをする一方、後半の期に今度は逆に排出権価格を吊り上げる方向に操作して、バンキングしておいた排出権を高い価格で売却したと解釈される。カリフォルニア州のシミュレーション分析の結果は、理論分析と整合している。 この他、排出権取引制度と同様に温室効果ガスの抑制に資するRenewable portfolio standards (RPS)の制度に関する分析も行った。RPSの規制目標が内生的に決定されるモデルを構築して分析した結果、不完全競争下に比べて、完全競争下で過剰に再生可能エネルギーが導入され社会厚生が悪化する可能性があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の計画に沿って、米国カリフォルニア州の現実の市場データを使った排出権バンキングのシミュレーション分析を行った。それにより、理論的な分析結果に関する一定の検証ができ、研究目的を着実に達成しつつある。ただし、追加的に米国の他州の市場データを使ったさらなる検証も今後試みたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、当初計画に沿って、スマートグリッド環境における地域の需要家とそれを束ねるロードアグリゲーターの動学的な行動を説明するモデルを構築・分析する。これに加えて、米国の他州の市場データも使って、排出権バンキングモデルのさらなる検証も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
排出権バンキングモデルに関して、米国のカリフォルニア州だけでなく、追加的に他州(PJM等)の市場データも使ったさらなる検証を次年度に実施したく、データ収集や専門家と意見交換をする海外出張を次年度に行いたいため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に、米国他州のシミュレーション分析を追加的に行うので、データ収集や専門家と意見交換のための海外出張を実施予定である。
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