研究課題/領域番号 |
26380295
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
吉田 裕司 滋賀大学, 経済学部, 教授 (40309737)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 世界金融危機 / スピルオーバー / 外国為替市場 / 為替レートパススルー / 国際港別分析 |
研究実績の概要 |
(1)国際学術誌(Emerging Markets Review)への研究論文の掲載。当科研費研究課題としては、世界金融危機が発展途上国経済に与えた影響への分析を行った。この研究論文ではアフリカの金融市場への危機の伝播についての実証分析を行った。特に外部(先進国株式市場、商品市場、外国為替市場)と内部(アフリカ地域内株式市場)にと大きく四つの要因に分解して、アフリカ国内の株式市場に与える影響をDiebold-Yilmazのスピルオーバー指標を用いた計測を行った。主要な結論としては、アフリカ域内での金融統合が進みつつあるが、世界金融危機がアフリカ株式市場に与えた影響の要因は先進国株式市場(特に欧州)が最も大きかった。
(2)国際研究書(The Handbook of High Frequency Trading)への研究論文の掲載。当科研費研究課題としては、世界金融危機から大きな影響を受けた外国為替市場における市場マイクロストラクチャーの実証分析を行った。具体的には、外国為替市場の電子ブローキングシステムにおける発注方法の一つであるmarket orderに着目して、価格優位性よりも執行優位性を重要視しているmarket orderがなぜ高い頻度で取引成立に至らないかを明確にした研究である。
(3)日本の研究機関(RIETI)からの研究論文のディスカッションペーパーとしての刊行。当科研費研究課題としては、世界金融危機が日本の貿易に与えた影響を日本地域別の貿易で分析した。本研究では、自動車輸出の為替パススルーについて、日本の輸出データを国際港別に用いたことに大きな貢献がある。結論としては、先行研究が指摘してきた相手国先別・商品別による為替パススルーの違いだけでなく、同一メーカーの類似商品(同様のエンジンサイズ)であっても、モデル別に為替パススルーが異なりえることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費課題『世界金融危機による信用縮小と貿易縮小の日本地域別要因分析』においては、大きく四つの段階(①信用縮小を都道府県レベルで計測する、②輸出に内在された輸入を測定する、③都道府県別の輸出縮小の分析を行う、④最初二つが③に与えた影響を分析する)があるが、今年度は本研究課題を包括する「世界金融危機に関連する研究」は大いに進んだが、研究目的に密接に関連する部分では③についてのみ進めたことになる。但し、②については別の研究課題において世界的な産業関連表を用いた分析を進めたことによる経験から、国内の産業関連表を用いた分析手法を習得し、次年度の準備が出来ている。元々④に関しては、初年度の目標ではなく二年目・三年目の目標であるので問題はない。 具体的な研究成果としては、国際的に評価できるHandbookに一つの章の掲載、評価の良い国際学術誌に論文一遍を掲載、国内研究機関からディスカッションペーパーを一遍刊行できた。
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今後の研究の推進方策 |
本科研費課題『世界金融危機による信用縮小と貿易縮小の日本地域別要因分析』においては、大きく四つの段階(①信用縮小を都道府県レベルで計測する、②輸出に内在された輸入を測定する、③都道府県別の輸出縮小の分析を行う、④最初二つが③に与えた影響を分析する) である。現在までの達成度で示した通り、初年度には②並びに③に関しては部分的に進めることが出来た。 本年度については、①を主力的に進めるために、国内信用の地域別データの作成に主力を注ぐように行う。また、②の分析を行うために、国内産業関連表を用いて、産業別の輸出に含有する輸入率の計測を本格的に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会の参加が増えたため旅費支出は増加したが、それを補う以上に物品費の支出が抑制された。物品費の支出削減の主な理由の一つには、予定していたコンピューターの購入を控えたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度には、次年度使用額を当初の予算に加えて、データ処理並びにデータベース構築のための専用のコンピューターを購入する予定である。
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