研究課題/領域番号 |
26380296
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢野 剛 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90314830)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中国 / 銀行 / 企業間信用 |
研究実績の概要 |
昨年度のマクロレベル計量分析及び現地聞き取り調査の成果をもとに、今年度は第一に中国全土をカバーする大規模な企業ミクロデータを用いた銀行ファイナンスの効率性の計量分析を行い、第二にその計量分析結果が出現するメカニズムを探求するための現地調査を行った。 1)企業ミクロデータを用いた計量分析により興味深い結果が幾つか得られた。第一に銀行融資を受けることが民営企業にとっては生産性・業績を好転させる効果を持つ一方、国有企業の特に収益性で計測した業績にはかえって負の影響を与えていた。第二に、比較参照点としての企業間信用受信についても民営企業の生産性・業績への正の影響が観察され、国有企業のパフォーマンスへの影響は不明確であった。第三に、中国全土で過去に良好なパフォーマンスを示した民営企業は銀行融資アクセスやその融資額が大きくなるという結果が得られたが、過去の良好なパフォーマンスが民営企業の企業間信用受信を促進するという効果は経済的先進地である沿海部に限定されることも明らかになった。 2)上記の計量分析結果が出現するメカニズムを更に深く考察するために、中国現地での企業・銀行聞き取り調査を前年に引き続きおこなった。その結果、国有企業への銀行融資において事前審査時の重視事項は企業業績よりもむしろ政府との関係の強さを含めた企業の社会的ステータス、民営企業への銀行融資は企業業績を非常に厳格な基準で審査し融資対象を限定していること、民営企業側もそうして得られた銀行融資は日常操業の資金制約を緩和するのみならず、しばしばリスクを伴う設備投資に使用することが見えてきた。企業間信用受信も、民営企業の日常操業以外の設備投資をもファイナンスすること及びそれが取引企業間での技術知識の共有によることが聞き取り調査レベルで明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に生じただ日中間の外交関係の状況の余波による研究計画実施の遅れをかなりの部分挽回しつつ、平成27年度の研究計画を概ね実施できたため。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査を継続しつつ、研究課題のより深い部分でのミクロ計量分析を行っていくことにより、課題解明の完成を目指す。また、調査・計量分析において経済的後進地域への一層の注視をしていく予定でもある。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年度、日中関係の悪化の影響を受けて現地調査の遅滞が一部生じ、昨年度はそれをかなりの部分挽回することができたが、まだ調査が当初の計画より遅れている地域が残ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度のスピードアップしたペースで現地調査を仕上げにかかることを予定しており、それに次年度使用額も含めた補助金が使用されていく。
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