研究課題/領域番号 |
26380299
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
駿河 輝和 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (90112002)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 契約栽培 / 中国商人 / 貧困削減 / 商品作物 |
研究実績の概要 |
2014年9月にラオス北部のルアンナムタ県のナムタ郡、シン郡、ロン郡の各郡の3つの村、合計9つの村を訪問して現地調査を行った。中国とフィリピンは領土問題でもめており、その関係でフィリピンは中国にバナナを輸出できなくなっている。したがって、中国商人がラオス北部に来て農民から土地をリースしてバナナプランテーションを経営していた。水田がバナナプランテーションに代わっていることを懸念した県は新規のバナナ・プランテーションへの転換を禁止し、現行のプランテーションは3年限りと規制している。各村に中国商人が来てスイカ、カボチャなどの契約栽培を行っている。中国商人は技術、資本、販路を提供し、ラオス農民は土地と労働を提供する契約栽培を行っているが、最初に資金をもらうが買い取り価格は安い契約と、最初に資金はもらわないが買い取り価格は高くなる契約がある。農民がどれだけリスクをとれるかという点で契約内容が異なっている。村の人的水準、土地の質、水量、立地などの状況、来ている中国商人により契約栽培も異なっている面があることが分かった。ゴムの植林は、ゴムの価格が暴落しており、採取をしていない村もあった。村だけでなく、ゴム工場、中国投資の農業会社、農業試験場、中国国境なども訪問して聞き取り調査を行った。以前訪問したときに比べて中国国境のトラックの数が格段に増え、そのサイズが大きくなっており、国境間での農産物などの輸送が頻繁になっていることがうかがえた。 農林省が中心となりアジア開発銀行の資金を利用して収集した「2010-2011年北部地方開発セクタープロジェクト」のポンサリー県、ルアンナムター県、ボケオ県の3件の家計調査個票データを使用して、契約栽培と貧困の分析を行った。その契約栽培は平均して収入の12%を占め、計量経済学分析の結果は契約栽培は貧困削減に役立っているということを示していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでウドムサイ県の村に限定していた調査をルアンナムタ県の9つの村に広げることができて、契約栽培の契約内容、対象の農作物に関してより多様性があるという情報を得た。また、比較的簡単な灌漑の修理により、契約栽培による収穫が急増しているケースを見ることができた。農業技術に関しては中国側が圧倒的に優れていて、ラオス側は太刀打ちできていないこともよくわかった。ビエンチャンで開かれたAsian Rural Sociological Society において論文を発表することができ、『経済政策ジャーナル』に論文の掲載が決まった。
|
今後の研究の推進方策 |
契約栽培は中国商人が生産技術、販路、需要者が要求する品質など重要な情報を握っているため、ラオス農民は受け身にならざるを得ない点は共通である。しかし、村の人的資源、土地の質、水量、立地などにより契約栽培の中身が異なって多様であることが分かった。したがって、より広く契約栽培の実例を見ていくことの重要であり、やや広い範囲で調査地を回る必要があるんので、このことを実行に移す予定である。また、契約栽培に関する理論とラオスの事例との関連づけ、中国における契約栽培の調査に関する文献を読んで中国国内との違いを調べる計画を立てている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学内の海外調査のための資金が得られたため、ラオスへの海外調査費用が少なくて済んだことが原因である。
|
次年度使用額の使用計画 |
余った資金はラオスへの海外調査のための資金として使用する予定である。
|