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2015 年度 実施状況報告書

アジアの貧困軽減と日本の労働力不足解消に対する日本の「外国人技能実習制度」の貢献

研究課題

研究課題/領域番号 26380303
研究機関佐賀大学

研究代表者

P Ratnayake  佐賀大学, 経済学部, 教授 (90221697)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード技能実習制度 / 技術移転 / 貧困削減 / アジアの工業化 / 人的資源育成 / 日本の労働不足 / 中小企業
研究実績の概要

平成27年度は、技能実習生が日本で働きながら何を学んだのか、帰国後に自国経済発展と生活改善にどう役立ったのかについて、当事者に資料・聞き取り・アンケート調査を実施した。分析の結果、受入れ企業は重要な製造技術等の移転を実習生に行っておらず、むしろ実習生を労働集約的作業部分の単純労働者として活用していることが明らかになった。国際貢献を打ち出す技能実習制度は、実際には日本の労働力不足解消の手段として活用されていることが、中小企業への聞取り調査から明らかになった。日本企業、アジアの派遣機関、技能実習生は、同制度が「研修」ではなく、「労働力確保」または「雇用機会の確保」と認識している。建前と実態に大きな相違が生じている。また、実習生の多くが専門用語や製造技術、複雑な工程等を理解できる教育レベルを有していない。それが技術移転の障壁になっている。
しかし、実習生の日本的「労働倫理/社会的価値観」の評価は極めて高いことが明らかになった。帰国後の生活改善だけでなく経済社会発展にも直接・間接に貢献している。また、同制度が実習生の国籍、経済力、文化・宗教の相違に関係なく「社会的価値観を主とする人的資源育成の発展」に多大に貢献していることが調査で明らかになった。
最後に問題点を指摘しておく。同制度には、①官僚主義的諸制度の下に、実習生の送出・受入・仲介を担う民間業者が多数存在する。このことで受入れ企業と派遣・仲介・監理団体側は多額の費用が強いられている。その費用は実習生が負担する仕組みになっているため彼らの手取りは少ない。②日本は同制度や実習生の実態を開示しないため、肯定的貢献が見落とされ、否定的評価だけがメディアを通じて表出し、世界の批判の対象になっている。③実習生は地域社会との交流がないために、日本社会における多文化共生社会の構築とアジアと日本との友好関係の発展の機会が阻害されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現段階における「研究の目的」はおおむね順調に進展しており、そう判断した理由は以下のとおりである。日本で研修を受けているアジアの技能実習生に対してアンケート調査を実施し、それを集計分析し、学術論文としてまとめた。現在、出版に向けて準備を進めている。また、帰国実習生についてもアンケート調査を実施し、現在、集計分析中である。そして、これらの成果は佐賀大学で国際セミナーを開催して、国内外の研究者および日本の技能実習生受け入れ企業、佐賀県中小企業中央会の関係者を招き、調査研究の成果報告および論文発表を行った。

今後の研究の推進方策

平成28年度の進捗方策
国内外の調査で残されたことについて、必要な限り補足調査を実施する。特に、アイムジャパンの協力のもとで、国内の技能実習生および帰国者を対象にアンケート調査を実施する。また、国内外の現地調査結果の検討および最終的な報告書のとりまとめの検討・確認作業を実施する。国内外の共同研究者・協力者を招聘して、佐賀大学で合同研究会等を開催する。最後に、本研究の研究成果を著書としてまとめる計画をしている。

次年度使用額が生じた理由

H27年度に計画していた国内外でのアンケート調査の一部について実施できなかったために、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

H28年度は、日本の受入れ機関であるアイムジャパンの協力のもとでアンケート調査を実施する計画をしている。その調査費用として用いる計画である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2016 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 学会発表 (6件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] Kasetsart University(Thailand)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      Kasetsart University
  • [国際共同研究] Peradeniya University(Sri Lanka)

    • 国名
      スリランカ
    • 外国機関名
      Peradeniya University
  • [国際共同研究] Hasanuddin University(Indonesia)

    • 国名
      インドネシア
    • 外国機関名
      Hasanuddin University
  • [学会発表] 「アジア諸国の経済社会発展に対する日本の外国人技能実習制度の貢献:佐賀県の実習生に関する実態調査の結果について」2016

    • 著者名/発表者名
      Ratnayake P, Saliya De Silva
    • 学会等名
      『外国人技能実習制度』に関する国際セミナー
    • 発表場所
      佐賀大学
    • 年月日
      2016-01-28
  • [学会発表] 「外国人技能実習制度:佐賀県の現状況について」2016

    • 著者名/発表者名
      高羽 淳司
    • 学会等名
      『外国人技能実習制度』に関する国際セミナー
    • 発表場所
      佐賀大学
    • 年月日
      2016-01-28
  • [学会発表] 「外国人技能実習制度:ベトナム人実習生の受入れ経験について」2016

    • 著者名/発表者名
      飯田 清三
    • 学会等名
      『外国人技能実習制度』に関する国際セミナー
    • 発表場所
      佐賀大学
    • 年月日
      2016-01-28
  • [学会発表] 「労働力の輸出と経済発展:アジア諸国の経験を中心にして」2016

    • 著者名/発表者名
      Prof. W.D. Lakshman
    • 学会等名
      『外国人技能実習制度』に関する国際セミナー
    • 発表場所
      佐賀大学
    • 年月日
      2016-01-28
  • [学会発表] 『タイの経済発展に対する日本の外国人技能実習制度の貢献:帰国実習生に関する実態調査の結果について2016

    • 著者名/発表者名
      Dr. Worawan Toommongkol
    • 学会等名
      『外国人技能実習制度』に関する国際セミナー
    • 発表場所
      佐賀大学
    • 年月日
      2016-01-28
  • [学会発表] 「日本の労働力確保戦略における外国人技能実習制度の展開と展望」2016

    • 著者名/発表者名
      鹿毛 理恵
    • 学会等名
      『外国人技能実習制度』に関する国際セミナー
    • 発表場所
      佐賀大学
    • 年月日
      2016-01-28
  • [備考] http://ratnayake.eco.saga-u.ac.jp/Intern_Training/

  • [学会・シンポジウム開催] 技能実習制度に関する国際セミナー2016

    • 発表場所
      佐賀大学
    • 年月日
      2016-01-28 – 2016-01-29

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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