研究課題/領域番号 |
26380303
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
P Ratnayake 佐賀大学, 経済学部, 教授 (90221697)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 技能実習生制度 / 技術移転 / アジアの経済発展 / 日本の労働力不足 / 人的資源育成 / 貧困削減 / 日本の中小企業 / 労働力の訓練 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は、アジア諸国の低所得者層の貧困軽減のために、貧困層の「エンタイトルメント」、いわゆる人々が持つ労働力や物的資源を活用できる「ケーパビリティ」を発展させる主な方法として日本の「外国人技能実習制度」はどのレベルで貢献しているのかを明らかにすることである。特に、日本で得た知識と資金が帰国後の貧困軽減にどの程度、役立てたのかを実証的に分析することである。同時に、本制度が日本の農業や中小企業の労働力不足の緩和に有効な制度なのかを検討する事も、もう一つの目的である。上記のことを明らかにするために、事例研究としてアイムジャパンの指導のもとで受け入れてるインドネシア、タイ、ベトナム出身の技能実習生1200人に対して実態調査を実施した。 実態調査で明らかになったことは次の通りである。①実習生の8割以上は高校を卒業した独身男性で、5-6人家族あること、②大多数の実習生は低所得者で貧困者ではないこと、③実習生の日本での研修期間における月平均純所得は10万円~12万円であること、④日本人の「労働倫理」、いわゆる道徳的価値観、チームワーク力、時間内に仕事を完了する力、仕事の質を向上させる責任力、自分の仕事に責任を持つ力に大きく貢献しているという自信を持つこと、⑤労働倫理は帰国後の実習生の生活改善にだけでなく、自国の経済社会発展にも直接・間接的に貢献していることなどである。 最後に本調査で明らかになった問題点は過去3年間の調査結果と同様である。特に、実習生は地域社会との交流がないために、日本社会における多文化共生社会の構築とアジアと日本との友好関係の発展の機会が阻害されていることなどが明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階における「研究の目的」に対する進捗はおおむね順調に進展しており、この判断理由は以下の通りである。 日本で研修を受けているアジアの技能実習生を対象にアンケート調査を実施し、それを集計及び分析を行い、学術論文としてまとめた。さらに帰国実習生に対してもアンケート調査を実施しており、現在集計分析中である。本成果は佐賀大学にて国際シンポジウムを開催し、国内外の研究者および日本の技能実習生受け入れ企業、佐賀県中小企業中央会の関係者らとアイムジャパンの会長を招き、調査研究の成果報告及び論文発表を行った。 シンポジウムには国内外・学内外から約300名の参加があった。日本も含めて6ヵ国からフルペーパーの提出があった。出席状況や論文のレベル、出席者から出された意見やコメント、好評的な反応から、本シンポジウムの目標は達成したと思われる
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今後の研究の推進方策 |
国内外の調査で残された課題に対して、必要な応じて補足調査を実施する。特にアイムジャパンの協力により日本の受け入れ企業と帰国実習生を対象に実態調査を実施する。また国内外の現地調査結果の検討および最終的な報告書のとりまとめの検討・確認作業を実施する。国内外の共同研究者・協力者を招聘し、佐賀大学にて合同研究会等を開催する。最後に、本研究の研究成果を著書としてまとめる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は以下の通りである。①当初想定していたアンケートの回収数を大幅に上回り、想定だった数字の4倍近くの約1200名分の量的・質的なデータ分析に時間が必要になったこと。②補助事業の目的をより精緻に達成するために、企業を対象としたアンケート調査の実施が必要になったこと。 ③身内の介護が必要になったこと。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度は、アイムジャパンの協力のもとで日本における実習生の受け入れ企業と帰国実習生に対して聴き取り・アンケート調査を実施する計画をしている。
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