技能実習生制度の目的は、途上諸国の近代化、いわゆる工業化の発展に必要とする日本の技術を教えることである。しかし、過去4年間で実施した調査で明らかになったのは、同目的の達成は不可能であったことである。 しかし同制度は、アジア諸国の低所得者層の人的資源育成と貧困軽減のために多大な貢献する持続可能な戦略になっていることは、帰国実習生対する調査で証明された。特に、貧困層のエンタイトルメント、いわゆる実習生が持つ労働力や物的資源を活用できるケーパビリティを発展させる主な方法として、日本の技能実習制度は非常に高いレベルの貢献していることが明確になった。実態調査で明らかになった具体的なことは次の通りである。①実習生の8割以上は高校を卒業した独身男性であること、②大多数の実習生は低所得者であること、③実習生の日本での研修期間における月平均純所得は10万円~12万円であること、④日本人の「労働倫理」、いわゆる道徳的価値観、チームワーク力、時間内に仕事を完了する力、自分の仕事に責任を持つ力が大きく貢献するという自信を持ったこと、⑤上記に述べた労働倫理は帰国後の実習生の生活改善にだけでなく、自国の経済社会発展にも貢献していること、などである。 最後に本調査で明らかになった具体的な問題点は、以下の通りである。①受入れ企業は製造技術の移転を実習生に行っておらず、むしろ実習生を労働集約的作業領域の単純労働者として活用していること、②国際貢献をづたった技能実習制度は、実際には日本の労働力不足解消の手段として活用されていること、③日本の受入れ企業、アジアの派遣機関、技能実習生は、同制度が研修ではなく、労働力確保または雇用機会の確保と認識していること、④実習生は地域社会との交流がないために、日本社会における多文化共生社会の構築とアジアと日本との友好関係の発展の機会が阻害されていることなどが明確になった。
|