研究課題/領域番号 |
26380308
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研究機関 | 千葉経済大学 |
研究代表者 |
片岡 光彦 千葉経済大学, 経済学部, 教授 (20321713)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 開発経済学 / 地域経済学 / 実証分析 / インドネシア / 地域間要素不均衡 / 地域間経済格差 |
研究実績の概要 |
世界第4位の人口と東西5千kmに及ぶ広大な国土を有する島嶼国家インドネシアは、独立以来の政策課題である経済活動の地域間不均衡の是正に尽力してきた。しかし、経済活動の6割が国土面積の1割弱のジャワ島に集中する状況は現在も変わらず、解決に向けた政策研究上の貢献が求められてきた。 こうした状況を踏まえて、本研究は、インドネシア政府への政策提言を目的に、地域間要素不均衡が経済成長に与える影響を、(1)人的資本の地域賦存量とその格差、(2)物的資本の地域間スピルオーバー効果を踏まえた地域開発政策の方向性、(3)効率性の影響を除いた各地域の生産性成長の技術進歩要因の3項目を、地域経済パネル・データを用いて、明らかにする。 具体的には、(1)では、インドネシアの政府統計から抽出可能な識字率、高等教育機関数、高等教育修了者数、最終学歴別労働人口、平均就学年数などの人的資本の代理変数から、中等・高等教育修了就業者数を人的資本と定義して、Cheng and Li (2006)のタイル係数の加法要因分解式を用いて、地域間賦存量格差の変化要因を分析する。 (2)では、物的資本の地域間スピルオーバー効果を説明変数に組み入れた地域生産関数を推計し、それらのパラメータからKataoka(2014)の投資の均等配分比率を算定し、実際の投資の地域配分比率を時系列に比較する。これにより、効率性と衡平性の観点から、資本の地域配分パターンを示すことで、過去の地域開発政策の方向性を明らかにする。 (3)では、確率的フロンテイア法を用いて、技術進歩要因、効率性要因、規模要因の生産性成長の各構成要素を算定する。 本研究の特色は、データ制約の大きい開発途上国の実証分析面での技術的な貢献と途上国政府に対する政策的含意の提供の2点に集約される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の研究実績の概要の(1)では、論文のドラフトが完成し、今年度中に学会報告と国際学術誌に投稿予定である。(2)では、現在、作業中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前述の研究実績の概要の(2)及び(3)を進めていく。(2)では、物的資本の地域間スピルオーバー効果を想定した資本の地域間配分から政府の地域開発政策の方向性を検証してきた。この検証では、当初は、域所得統計の固定資本形成のデータに基づき推計した総物的資本の変数を利用する計画であった。しかし、同変数は、民間・社会資本の区分されない総資本として推計されている。したがって、地域政策に基づきその賦存量が決定される社会資本と利益最大化行動に基づき賦存量が決定される民間資本の両社の特性を有するために、インドネシアの地域開発政策の変化を把握する代理変数として適していない。そこで、本研究では、社会資本ストックの地域の配分状況の観察を目的に、様々な公刊データを利用して、州別の民間・社会資本額の推計を試みる。 (3)では、前述の(1)と(2)で整備した地域経済パネル・データを用いて、ソロー型成長会計分析の生産者の完全な効率性という仮定に準拠しない確率的フロンテイア法を用いて、各州の経済成長における技術進歩の状況(技術進歩要因)を明らかにする。この結果を用いて、人的資本の技術進歩への影響も明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果報告を予定していた国際大会の開催地が政情不安となり、海外出張を中止したため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記で報告予定であった研究成果を、本年8月の欧州大会(The 55th Congress of European Regional Science Association)で報告する計画である。そのため、2014年5月に使用予定であった海外旅費を充てる予定である。
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