研究課題/領域番号 |
26380310
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
椋 寛 学習院大学, 経済学部, 教授 (90365065)
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研究分担者 |
石川 城太 一橋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80240761)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 貿易自由化 / 修理サービス / 並行輸入 |
研究実績の概要 |
耐久財の消費に必要不可欠な修理サービスと国際貿易に関連して、本年度は以下の2つの研究を実施した。 (1)海外直接投資を通じた外国での修理サービスの提供が困難な場合、現地で競合品を生産している企業が有償で輸入品の修理サービスを提供している事例に着目し、その厚生効果を理論的に分析した。競合企業による輸入品の修理サービス提供への参入行動を考慮すると、輸入関税の引き下げが輸入国の消費者や外国企業に損失を与えかねず、世界厚生を悪化させる可能性がある。貿易自由化の悪影響を取り除くためには、修理サービス部門の海外直接投資の自由化が必要であることが示された。本研究は、経済産業研究所のディスカッションペーパー(DP)として公開された。 (2)企業から認定された正規輸入業者では無く、第3者が内外価格差を利用した転売を行うことを目的とした並行輸入と、修理サービスの関係について分析を行った。企業は並行輸入品と正規輸入品との差別化を図るために、並行輸入品の修理を拒んだり、高い修理価格を提示する「修理差別」を行う事例が多く見られる。企業の修理差別行動を明示的に考慮した理論モデルを分析した結果、修理差別が国家間の価格裁定を抑制すること、また企業が財の耐久性を高めるR&D活動を行っている場合、並行輸入品の流入が輸入品の耐久性の下落につながり、結果的に輸入国の消費者が損失を被る可能性が示された。さらに、貿易自由化が進んでいるほど、財の耐久性の下落を通じて消費者が損失を被る蓋然性が高いことが明らかにされた。 これらの研究結果は、貿易自由化や並行輸入の許可といった政策変更の影響を考える際には、輸入国における修理サービスの提供主体や提供方法を考慮する必要性があることを示唆しており、いずれも政策含意に富んだ重要な研究成果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である平成26年度は、耐久財の消費と不可分の関係にある修理サービスに着目した研究を行い、(公開予定のものも含め)2つの論文をディスカッションペーパーとして纏めた。そのうち1編は海外の有力な査読付き学術誌から改訂要求を得ていることから、概ね順調な成果を上げているといえる。次年度以降は、修理サービス以外の側面にも注目しつつ研究を拡張する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、耐久財のリースと販売を区別するなど、中古品と耐久財の貿易の他の重要な側面に関しても分析を進め、年度内にディスカッションペーパーに纏めつつ、国際学術誌への投稿を目指す。既に得られた研究成果に関しては、学会報告やセミナー報告等を通じて内容の精緻化に努めるとともに、国際学術誌への投稿、及び改訂要求が得られた場合には早急に改訂作業行い掲載を目指す。また、研究グループの定期会合を開催し、研究の方向性や発展性を固めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料収集に関して大学院生への謝金支払いを予定していたが、予想に反して大学院生を雇用する事無く必要な資料収集を行うことが出来た。また、学内からの出張補助金を併用したこともあり、国内外の出張費が予定額を下回った。以上2点が、支出額が受領額を下回った主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度も引き続き資料収集が必要であることに加え、英文校閲の支出が予想以上に多く見込まれ、また円安の状況で海外渡航費が上昇していることから、翌年度分の請求額以上に人件費・謝金や旅費がかかる事態が予想される。次年度使用額は、その不足分に充当する予定である。
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