昨年度に引き続き、並行輸入品に対して企業が修理サービスの拒否や価格差別を行うことの問題について論じた理論分析である「Parallel Imports and Repair Services」について分析をさらに進めた。具体的には、研究代表者と研究分担者、海外の研究協力者の3名が定期的に会合を開きながら、厚生分析の精緻化、論文の貢献点の明確化、結果の頑強性の確認などを行った。特に、これまでは数値例のみで示されていた結果の一部が解析的に示せるようになったのは大きな進歩であり、直観的な説明を増補することにより、そのメカニズムも明瞭になった。本研究は、研究代表者と研究分担者により複数の国際学会において報告がなされた。現在は論文の見直しの最終段階にあり、近日中に国際学術誌へ投稿される予定である。 また、同じく3名による共同研究である貿易自由化と修理サービスの提供の関係について分析した論文、「Trade Liberalization and Aftermarket Services for Imports」が、 2016年10月に国際的学術誌であるEconomic Theory誌に正式に出版された。 これら2本の研究結果は、貿易自由化や並行輸入の許可といった本来は価格の低下や市場の統合を推進し経済厚生を高めるべき政策が、耐久財に関わるサービス部門における修理の提供状況に大きく依存することを明らかにしており、サービス部門における自由化の推進や差別的活動の規制の重要性を新たに指摘した、政策含意が大きい成果であるといえる。 さらに、研究代表者は近年の国際貿易の研究の進展について包括的にサーベイをした書籍を共編著し出版した。また、本研究テーマに関連する不完全競争下の貿易政策や直接投資政策について理論研究を並行して行い、うち2本について国際的学術誌への掲載が受理された。
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