本研究は民営化が現在進行中の国管理空港を主な対象に、経済的規制のあり方について分析を行った。国管理空港の多くは赤字であり、非効率な運営方式が批判されてきたが、一方、現在の民営化において経済的規制の十分な検討がなされていない。
本研究は第一に日本の航空旅客需要関数を測定し、各航空会社の限界費用を求めた。第二に各空港の航空系・非航空系の費用関数をそれぞれ求めた。得られた情報から4つのシミュレーションを行った。
分析結果の概要を以下に示す。第一に、国管理空港が赤字であるのは、非効率な経営だけでなく政策的に誘導された低い航空系料金(着陸料)も原因の一つであった。比較的小規模な空港でも航空系部門は黒字化が可能であることが示された。第二に、もし民営化空港が利潤最大化した場合、航空系料金は現在の最大約9倍に値上げされる可能性がある。羽田成田といった空港間競争は航空系料金を低めるが、航空系部門と空港ビルに代表される非航空系が統合されても、航空系料金の低下は限定的であることが明らかになった。第三に、独占シナリオよりも現実的な交渉シナリオにおいて、空港が航空会社と価格交渉を行う場合でも、航空系料金は現在よりも高くなる。第四に、非混雑空港の場合、シングルティルと呼ばれる航空系・非航空系を一括にした着陸料規制の方が資源配分上、望ましいことが判明した。但し、混雑空港や非航空系部門が赤字の空港の場合はこれに該当しない。最後に、空港間合併についてシミュレーションを行った。空港間に代替・補完関係がなければ、かつ規模の経済が大きくなければ、合併が航空系料金に与える影響はない。空港間が補完関係にある場合、水平合併は利潤大化の航空系料金を下げる。一方、空港間が競合関係にある場合、水平合併は空港会社の利潤を増やし、その結果、総余剰は低下することが分かった。
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