研究課題/領域番号 |
26380313
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中嶋 亮 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (70431658)
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研究分担者 |
田村 龍一 一橋大学, 商学研究科, 助手 (50546421)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 知的相互作用 / スピルオーバー |
研究実績の概要 |
本研究では、大学における知的相互作用と知識のスピルオーバーの実態を理論的かつ実証的に解明することを目的とする。特に、研究者間の連鎖的な知的相互作用が生み出す知識のスピルオーバーが学術研究と科学技術の推進に与える定量的な効果を計測する。同時に、指導教員から指導学生に伝播する知識フローを数値化することで若手研究者養成に発揮される大学教員の教育的貢献を可視化して評価する。 具体的に以下の2つのテーマに則して分析を進める。①研究者間の知識のスピルオーバーの計量分析:本研究では、研究拠点大学における相乗効果によって増幅された知識が、研究者間に拡散する速度と範囲を測定し、学術研究と科学技術の成果の質と量の向上に与える影響を定量化する。②教員から学生へ伝播する知識のスピルオーバーの計量分析:大学における知的相互作用は指導教員から指導学生への世代を超えた知識の伝播という形でも発現する。本研究では若手究者人材育成における大学教員の貢献度を博士号取得研究者の学術研究・科学技術の成果に対する生産性の上昇への寄与分として推定し、大学院教育における高度技術人材育成の有効性を可視化して評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、①のテーマに関して、日本大学の村田安寧教授と本研究課題の研究分担者である田村龍一氏と共同研究をすすめ、特許引用距離のノンパラメトリック密度関数推定の研究を発展させた。これはMurata,Nakajima,OkamotoandTamura2013で示した研究成果の精緻化であり、とくに近距離で知識のスピルオーバーの計測の精度を高めるために局所線形密度推定(LocalLinerDensityEstimation)を使用を提案し、通常の密度推定によるスピルオーバーの計測とのパフォーマンスの差を比較検討している。 ②のテーマについて研究計画に従って研究者および大学・大学院についてのデータベース構築作業を行った。具体的にはThomson Reuters Web of Science (WoS) データベースを利用して東京大学理学部物理学学科に所属する教員と学位取得学生について出版論文情報を取得し、その研究生産性を計測した。また、東京大学理学部物理学科ホームページにおいて公開されている修士論文および博士論文一覧情報を整理することで大学院学生とその指導教員のマッチング情報を取得した。これらのデータをつかって指導教員の研究の質が指導学生の研究業績に与える影響について重回帰分析を実施し、教員から学生への知識のスピルオーバーの解析に必要な予備的な推定結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画に従って、知識のスピルオーバーを計測するための統計手法のすめる。その作業終了後は、新たに知識のスピルオーバー効果の推定および結果の頑強性の確認を実施する。具体的には①知識のスピルオーバーの地理的範 囲と知識拡散速度の推定という研究課題についてはノンパラメトリック密度関数の要因分解の手法を発展させることを予定している。また②知識のスピルオーバーが大学研究者の研究成果生産性に与える効果の推定という研究課題については(a)局所的相互作用モデルによるピア効果の構造推定、および、(b)研究ネットワークの内生的形成を制御するためマッチング・ゲームモデルを組み入れた構造モデルの推定をめざす。さらに③博士号取得者の研究生産性向上に寄与する指導教;員の貢献度の推定という研究課題については生産性付加価値モデルのセミパラメトリック推定を具体的に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は大容量のデータを利用した高速演算処理を行うために高性能ワークステーションの購入を検討していた。しかしながら、購入検討予定のApple Mac ProについてApple社がアップグレード計画を行うという情報があり、その購入を次年度以降に延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
高性能ワークステーションのであるApple Mac Proのアップグレードを待ち、同機を購入する予定である。
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