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2016 年度 実施状況報告書

特許権侵害に対する救済のあり方がイノベーションと特許出願行動に与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 26380314
研究機関工学院大学

研究代表者

矢崎 敬人  工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (10345150)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード特許制度 / イノベーション / 損害賠償請求権 / 差止請求権
研究実績の概要

本年度は,特許権侵害に対する救済として損害賠償請求権に焦点を当てた分析を進めた.製品生産を効率化する技術の研究開発と製品生産を行う技術開発者1社と潜在的侵害者1社が製品市場で数量競争を行うモデルの分析を行った.
損害賠償のあり方としては,技術開発者の逸失利益に基づく基準(特許法102条1項),侵害者利益に基づく基準(同102条2項),相当実施料額による基準(同102条3項)がある.本モデルでは逸失利益による基準と侵害者利益による基準の比較を行った.研究開発投資の効率性(研究開発による製品生産費用がどれだけ削減されるか)が極めて低い場合には侵害者利益基準による損害賠償は技術開発者の権利を過剰に保護し,研究開発投資の効率性が中程度の場合には逸失利益基準による損害賠償では技術開発者の権利保護が社会的高率水準より低いことを示した.
日本の特許法上,特許権侵害に対する損害賠償訴訟でどの基準を用いるかは特許権を侵害された技術開発者が決めることができる.研究開発投資の効率性がある水準より低い場合は技術開発者は逸失利益基準を選択し,研究開発投資の効率性がこれより高い場合は技術開発者は侵害者利益基準を選択することを示した.これは,技術開発者にこのような選択を許すような日本の制度が社会的効率性と合致する可能性を示すものとなっている.
上記と並行して,技術開発者が開発する技術を秘匿するか特許化するかの選択を組み込んだモデルの分析や差止請求権の有無がどのような相違をもたらすかの比較を進めた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

特許権者による権利行使がイノベーションを阻害している可能性がある事例の調査,各国制度・政策の調査は概ね想定どおり進捗している.理論モデル構築については,想定よりやや遅れている部分と,想定を超えて進捗している部分がある.研究成果の公刊に至っていないためにこの区分とした.

今後の研究の推進方策

引き続き各国の制度・政策,事例の詳細な検討を行うとともに,ヒアリング調査を行う.理論的分析については,前年度までに構築した理論的枠組みを用い,各国で用いられる,あるいは検討の対象となっている諸制度を詳細に分析し,それらが企業行動に与える影響を明らかにする.また,理論的分析,データ分析についてフィードバックを得る.

次年度使用額が生じた理由

成果発表のための出張を入れることがスケジュール上不可能となったため.

次年度使用額の使用計画

成果発表のための出張を次年度実施するためにスケジュールを調整する.

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公開日: 2018-01-16  

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