平成26年度は、2000年以降の制度の変化に着目し、中小企業の資金調達および政府の支援に関する制度面の発展を明らかにした。本研究で明らかになった点は次の4点である。第1に、中小企業の資金調達は自己資金に依存していることである。負債による資金調達は、友人・家族からの借り入れが多く、その次に銀行の利用が続く。第2に、中小企業の資金調達手段は次第に多様化したことである。2010年になると資金調達手段の多様化がすすめられ、マイクロクレジット機関やサプライヤーズクレジットを利用するようになってきている。また、ベンチャーキャピタルファンドも拡大してきた。第3に、信用情報機関が設立され、中小企業の信用状況に関する情報が集約されるようになったことである。また信用保証公社も中小企業の資金調達を支援する機関として活動している。第4に、政府および中央銀行も中小企業向けのファンドを設置し、資金支援を行っていることが明らかになった。それらの資金は、開発金融機関や商業銀行、イスラーム銀行が窓口となっている。また、政府はベンチャーキャピタルファンドにも比較的大きな割合で出資を行っている。 以上より、マレーシアにおいては中小企業の資金調達の手段は多様化され、政府・中央銀行も積極的な支援を行っているといえる。しかし、その一方で課題も判明した。本研究では、特に政策金融のチャネルが商業銀行やイスラーム銀行も含まれている点に着目し、この仕組みには利点、欠点の両方があることを指摘した。利点としては、政府が民間ビジネスで養った信用調査や審査の手法やノウハウを活用することが可能となり、借り手である中小企業のより厳密な信用調査や審査を行うことができる。一方、後者については、政策評価の点で、外部による公平・中立な分析が困難になることである。
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