平成28年度は、「メキシコ一国内35都市間の価格均一化についての実証分析」をテーマに、平成27年度に実施した「計量分析」「国内の専門家との意見交換」「実証分析の結果を踏まえた理論的考察」「論文の作成と発表」を発展させ、拡張的な「計量分析」及び「論文の作成」を行った。「海外及び国内の専門家との意見交換」も積極的に行い、昨年度に学会で発表した論文を発展的に改訂した。 研究成果として、「メキシコにおける一物一価の検証」(二松学舎大学国際政治経済学部Discussion Paper Series)を発表した。この研究は、通常一物一価の法則の実証分析で用いられる共和分検定のみならず、分散分解の手法を用いることにより、相対的な一物一価のみならず、都市間の絶対的な価格差についても分析しているという点で、既存研究を一歩進める新しい研究であると認識している。 他方、平成27年度に日本国際経済学会で指摘された点、すなわち、「北米自由貿易協定(NAFTA)」と「マクロ経済の安定化」のどちらがどの程度「価格の均一化」に影響を及ぼしたかについて識別するため、新しいモデルで計量分析を行った。ただし、別稿として発表するため、まだこの分析を論文として作成していない。今後英語で論文を作成して海外のジャーナルに投稿する予定である。 さらに、「国内の専門家との意見交換」により、NAFTA以降近年、メキシコにおいて急速に道路インフラの整備がなされたことと、一物一価の成立の関係についても今後検討する必要があると考えている。
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